[論説]次世代リーダーの育成 若い提案 事業に生かせ
「次世代育成プロジェクト」のように、若い世代が地域や産地、JAの将来を真剣に考え、実現に向けて取り組む時間をつくることは、重要だ。自分の地域や働く場をより良くしようと、主体的に関わるきっかけとなるからだ。
問われるのは、組織のトップや管理職の姿勢だ。プロジェクト発表をしただけで終わりとせず、良い意見や提案は、職場や事業の運営に採用してほしい。実践に結び付けて初めて、提案は生きる。
「次世代プロジェクト」での提案を形にしているのが、長野県のJA信州諏訪。ソルガム(タカキビ)は、プロジェクトで提案した職員らが、栽培から包装デザインを含めた商品化までを手がけ、JA管内のA・コープ店や直売所で販売している。生産者に新品目を提案しようと、株から養成を始めたアジサイ科のノリウツギは、栽培・出荷モデルを確立した上で、来年度からの出荷を目指す。
二つの事例に共通するのは、遊休農地を活用して、新たな品目で新たな産地づくりを進めようという視点だ。できるだけ手間のかからない“省力品目”で、適地のものを市場と相談して選んでいる。
営農指導のプロがいて販路があり、販売上のアドバイスを受けられる市場に近いJAの強みを生かした好事例といえる。総合事業を展開する「JAの底力」を発揮しよう。
若者の提案に対して、「良い案はどんどん採用している」「やってみなはれ」と、積極的にアイデアを取り入れるJAもある。農業界全体で、前例にとらわれない柔軟な考えを持つ、度量の大きなトップ層がもっと増えることを期待したい。
人づくりは、成果が目に見えるまで時間がかかる。地味な取り組みと思われがちだが、JAが今後も持続可能な組織であるためにも、最も大切な取り組みだ。組織づくりは人づくりから始まる。
「人づくり」の先にあるのが、地域や業界を超えた幅広い連携。業界全体の高齢化や働き手不足、それに伴う遊休農地の増加、世界情勢に関連する生産資材をはじめとするあらゆる物価の高騰――。こうした問題は、JAや地域、業界だけで解決することは難しい。大切なのは、既存の枠を超えた連携だ。
違いを排除するのではなく、生かす。若い世代の知恵を形にすることから始めたい。