[論説]基本計画の改定 希望持てる政策 結実を
基本計画は、6月に施行された改正食料・農業・農村基本法に基づく初の改定となる。坂本哲志農相は8月29日、食料・農業・農村政策審議会に計画の見直しを諮問した。審議会の議論を踏まえ、来年3月に閣議決定する。
これまでは、10年程度を見通して定めていたが、農水省は今後は5年間を計画期間とする方針だ。食料・農業を巡る環境が激変する中、施策の検証と改善を重ね、着実な目標達成を目指す。
次期基本計画では、改正基本法に基づき「食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標」を定める。8月29日の審議会では、JA全中の山野徹会長が「(目標の)達成に向けた着実な実践と施策の不断の検証・見直しを行うことを見据えて、意欲的かつ適切な目標を設定する必要がある」と指摘した。
2000年に基本計画を策定して以降、食料自給率の目標は一度も達成されたことがない。同省は、実現可能性も踏まえて目標を定める考えを示すが、達成ありきで数値を作ることに意味はない。
まずは、現下の農政課題を的確に捉えられる指標を作る必要がある。施策の検証には客観的なデータも欠かせない。調査人員の削減が続いてきた農林統計の再整備も検討すべきだ。
基本計画は5年ごとに見直され、これまで4回改定された。当初は、中長期を見据えた着実な農政推進を目指したが、時々の政権の意向によって大きく左右されてきた。
とりわけ、安倍政権下では、さまざまな農業改革が規制改革推進会議をはじめとする首相官邸に設けた会議の下で決定され、基本計画はそれを追認するものとなった。こうした官邸主導の農政は、環太平洋連携協定(TPP)対策などの予算を獲得した半面、暴論も多く混乱を招いた。
自民党総裁選を控える中、同党の森山裕・総合農林政策調査会最高顧問は日本農業新聞のインタビューで、食料安全保障に重きを置く農政の方針は、誰が新総裁になろうと「不変だ」と強調した。
総裁選後は衆院解散・総選挙が想定され、来夏には参院選も控える。政治の季節に入るが、農業の担い手減少や生産コストの上昇、水利・乾燥調製施設の老朽化など、先送りが許されない課題は多い。農業生産基盤の強化へ、骨太の議論を期待したい。