[論説]増える買い物弱者 集落維持へ継続支援を
買い物弱者が増えている背景には、商店の減少の他、さまざまな要因がある。高齢者による運転免許証の自主返納が増加していることや、バス路線の廃止、減便など公共交通の衰退、独居世帯が増えて地域のつながりが希薄になっていることも影響している。
農林水産政策研究所は、食料品を販売する店舗まで500メートル以上あり、65歳以上で自動車を利用できない人を「食料品アクセス困難人口」と定義する。農水省の20年の推計によると、全国の65歳以上の25%に当たる904万人に上る。高齢化で今後、さらに買い物に困る人は増加する見通しだ。
在宅での買い物を手助けする仕組みとして、生協などの宅配事業やネットスーパーがあるが、高齢者がスマホやインターネットを操作して注文するのは難しい。
対面による買い物支援は、地域に出向く移動販売や、店舗まで送迎する買い物バスや福祉タクシーがある。JAや民間事業者、行政などが各地で実施し、国も支援を進めている。
買い物は一見、深刻な問題として捉えづらいが、食料品の購入が困難になれば栄養は偏り、健康を害する恐れがある。医療や介護のように公的制度が整備されていないからこそ、社会的な課題として関係機関が連携し、対応する必要がある。
注目したいのが、住民による共助の取り組みだ。岩手県花巻市の「小山田スーパーおっほ」は、地域のAコープが閉店したことを受けて農家らが21年に開業し、いまや地域交流の拠点となっている。自家用車を活用し、スーパーまでの送迎をする地域も出てきた。こうした共助は、地域の農業を維持し、暮らしを守る課題解決の糸口にもなろう。集落の維持に向けて、行政やJAの支援も重要だ。
懸念されるのは、25年度農水省予算概算要求で、中山間地域等直接支払交付金の集落機能強化加算などが廃止されることだ。同加算は買い物支援や高齢者の見回り、送迎など営農以外の分野を支えている。このため、同加算を活用する花巻市のスーパーおっほなど現場からは、来年度からの支援を見通せず、不安の声が上がっている。
集落の機能維持は、買い物支援から始まる。現場の混乱を招かないよう、国は今後の対策を早急に検討すべきだ。