[論説]低い男性の育休取得 働きやすい職場環境へ
厚生労働省が7月末に発表した23年度雇用均等基本調査によると、男性の育休取得率は30%と、22年度の17%から急伸した。一方、84%に上る女性との開きは大きい。政府は、男性の育休取得率を「25年までに50%、30年までに85%」に引き上げる目標を掲げるが、一層の底上げが必要だ。官民挙げて機運を盛り上げていく必要がある。
同省が合わせて公表した、若年層(18~25歳)の意識調査では、男性の84%、女性の91%が「育休を取得したい」と回答した。就職活動の際は企業の育休取得情報を重視し、育休取得率が高い企業は、「安定している」「社員思い」「先進的」といった好印象を持つことも分かった。人材不足が深刻化する中で、育休取得率の向上が若者へのアピール材料となっている。
育児と仕事の両立に積極的な企業・団体を認定する制度もある。同省は、男性の育休取得率など一定の基準を満たした場合、子育てサポート企業として「くるみん」認定をする。認定組織は同省のホームページで公表され、今年7月末時点で全国約4600の企業・団体に上り、JA組織も複数含まれている。さらに高い基準を満たせば「プラチナくるみん」として認定される。こうした仕組みを積極的に活用し、職場風土の改革につなげたい。
男性が育休を取得しない、できない理由は何か。政府調査では、「収入を減らしたくない」「取得しにくい雰囲気があり、上司や職場の理解がない」などが上位を占める。休業に伴う収入減を補う制度として、雇用保険の育休給付がある。現在は手取りの実質8割補填(ほてん)だが、来年4月から両親ともに14日間以上の育休を取れば、最大28日間、実質10割まで引き上げられる。
育休後の労働環境も重視すべきだ。育児・介護休業法では、育休を取得できるのは原則として子どもが1歳になるまで、としている。当然のことだが、子育てはその後も続く。育休を取得できても、復帰後に長時間労働を余儀なくされ、平日は子どもの寝顔しか見られないような職場環境でいいのか。人間らしく働ける環境整備は待ったなしだ。
仕事と家庭生活を両立する「ワークライフバランス」は、働く人全てに重要だ。子育てしやすい職場は、誰にとっても働きやすい。JAや農業現場でも改善を進めよう。