[論説]JAの農業振興計画 多様な世代の声 反映を
地域農業振興計画とは、JAの生産面積や重点作物、販売などの計画を示すもので、各JAが策定してきた。2021年の第29回JA全国大会では、同計画に次世代の担い手の数など具体的な数値目標を盛り込み、達成に向けて事業承継や新規就農の支援を実践していくことを提起した。
10月に第30回のJA全国大会が控える中で、JA全中が11日に開いたJA営農・経済フォーラムでは、組合員参画型の地域農業振興計画の策定・実践をテーマに掲げた。
実効性を高めるには、組合員一人一人が、JAが掲げる計画を“自分事”として捉えられるかにかかっている。組合員や地域住民が、JAに求めるものが多様化する一方、JAの合併・広域化や職員の減少が進み、接点の希薄化も指摘されている。組合員との丁寧な対話は欠かせない。
農家組合員も、ベテランから中堅、女性、新規就農者まで幅広い層がいる。地域、生産部会、青年・女性組織など、所属もさまざまだ。「立ち位置」の違いを踏まえて、多様な世代の声をいかに反映できるかが課題となる。
例えば、営農・経済フォーラムで報告した北海道のJAきたみらいは、営農やJA運営の課題を聞くため、経営主、後継者、パートナーといった分け方でアンケートを実施した。さまざまな角度から地域とJAの将来の課題と解決策を探る狙いがある。
計画は、次世代の担い手や組合員数の目標を掲げるのに合わせ、実現に向けた具体策を示せるかも鍵となる。
JAふくしま未来は、独自の「のれん分け方式」で新規就農を支援する。就農相談から準備、経営の安定・発展まできめ細かく伴走する仕組みだ。JA愛知東は、トマトやイチゴなど「攻めの品目」を掲げて新規就農者を増やし、販売高や所得の向上につなげている。
フォーラムでは、組合員の参画だけでなく、職員が参画する大切さを指摘する声もあった。組合員や地域を知るJA職員の視点もまた、地域農業の未来図をつくるためには欠かせない。世界各地で続く紛争や天候異変など、食料・農業・農村を取り巻く環境が激変する中で、若手職員を積極的に登用して計画作りを進めているJAもある。
JAの組合員、役職員が一体となり、地域農業の未来図を描いていこう。