[論説]援農ボランティア 「国消国産」の応援団に
援農ボランティアは、農作業の手伝いを通して地域の景観や暮らし、歴史や文化、風習などを学べる。農家との交流を通して、なぜ農家が減っているのか、農産物価格の引き上げが必要なのかを「自分ごと」として理解できる機会となる。受け入れ側の農家も、単なる人手不足の補完として考えるのではなく、消費者との接点をつくる重要なきっかけと捉え、援農ボランティアを積極的に受け入れよう。
東京都農林水産振興財団によると、2022年度に都内全域の農作業ボランティアの新規登録者は1808人。都内73の登録農家に対し、22年度の派遣回数は3889回で、派遣が増えているという。活動への応募はスマホやパソコン上で手軽にできて参加しやすい。都は、ボランティアのための休憩用ベンチやロッカー、簡易トイレの設置などに購入費用の一部を助成している。万一に備え、ボランティア参加者は、無料で保険に加入できる。
産地のピンチを地域住民が救ったケースもある。千葉県市川市は、火傷病に伴う中国産花粉の輸入停止を受けて、1月に梨の花摘みボランティアを急募した。15戸の梨農家の園地で190人の市民らが花摘みをしたおかげで、授粉作業が間に合い、例年通り良質な梨を収穫できた。作業のお礼としてボランティア全員に梨をプレゼントした。
同市がボランティア参加者を対象にアンケートをしたところ、「来年も参加したいか」との質問に98%が「はい」と回答。農家からは「人手が足りないので助かった」「またお願いしたい」など感謝の声が上がっているという。
ボランティアとして初めて参加した会社員は「地道な作業の繰り返しで、農家の大変さがよく分かった。梨は地域の誇り。ボランティア同士で知り合いもできた」と、農業への理解が進んだ。
援農ボランティアは、農業の人手不足を補うこと以上の価値を得られる。畑に入って作業をしてこそ分かる苦労もある。農業は高齢化や担い手不足に加え、異常気象や生産資材の高騰などの課題に直面している。だからこそ、農業現場だけで解決するのではなく、地域住民の力を借りよう。生産者、消費者の枠を超えた有機的なつながりこそ、食と農の距離を縮め「国消国産」を実現する。潜在的な農業ファンを増やそう。