[論説]16日は「国消国産の日」 農業理解は直売所から
10、11月の「国消国産」月間は、全国に約1700あるJA直売所を複数回訪れることで国産農産物が当たるキャンペーンを展開する。地場産の農畜産物を買う楽しさ、農家と出会えるわくわく感で消費者を呼び込む一方、農業をもっと身近に感じられる仕掛けを考えたい。
猛暑などの影響で農産物が品薄になり、価格が高騰すると消費者の関心は、直売所に集まる。ところが、昨夏に続き今夏も高温が長期化し、生産現場は作物も人も疲弊している。特に端境期となる10月初めは、直売所の品ぞろえに苦労する時期だ。「暑さで野菜が少なく、ご迷惑をおかけしています」と売り場に掲示する直売所もある。農業の現状を率直に伝えることが、消費者理解の糸口になる。
特に作り手の思いを伝える、従業員の手書きの店内広告(POP)はぬくもりが伝わる。一方、効率性を重視するスーパーは電子化が進み、手書きの文字やイラストは減っている。だからこそ直売所は、その逆を行こう。
温暖化による病虫害や気象災害で規格外の農産物は増え、販売できる量は目減りしている。例えば、小さ過ぎて規格外になった野菜や果実は「かわいいベビーサイズです」とアピールするのも手だ。不ぞろいの袋詰めでも「サイズが違うと味も違う?。食べ比べてみて」と好奇心を刺激してみよう。農産物は、工業製品のように色や形がそろって育つわけがない。直売所は、農業の今を消費者に正しく理解してもらう場と捉えたい。
中央果実協会の調査によると、果実を食べない理由の最多は「食費に余裕がない」からで、価格の高さばかりがやり玉に挙がる。消費者が「見た目」を気にしなければ、値頃感のある果実が安定して手に入る未来もある。リンゴでは、均一に着色しないが栽培を省力化できる新品種「紅つるぎ」が登場し、日常使いとして照準を定める。
“令和の米騒動”では、各地の直売所の米売り場に行列ができた。愛知県のJA直売所は「地震の臨時情報が出た8月は米販売高が前年の1・5倍、10分置きに問い合わせがきた」という。食品供給の最後のとりでは直売所、と認識した客は多かっただろう。
「国消国産」月間に収穫祭を催す直売所は多い。生産者と消費者、相互の理解を深める機会にしよう。