[論説]2024年度天皇杯 女性活躍の環境整えよ
天皇杯は、過去1年間の農林水産関係の表彰や共進会、品評会といった行事の「農林水産大臣賞」受賞者から選ばれる農業分野で国内最高の栄誉だ。今回は463点から選ばれた。
農産・蚕糸部門のイカリファーム(滋賀県近江八幡市)は、米麦大豆を生産から流通・販売までする大規模法人。収益の可視化や情報通信技術(ICT)による生産管理で効率経営をリードする。同社代表の妻で取締役の史子さんは、教員の経験を生かして人材育成を担う。従業員の女性の能力を生かしたパスタや菓子など加工品の開発、食育・農業体験イベントを行う他、産休・育休制度の導入といった労働環境を整備し、女性が活躍できる場を創出した。
女性役員が新ブランド牛の企画責任を担うのは肉用牛一貫経営の蔵王ファーム(山形県南陽市)。牛情報データの一括管理や飼料用米など地域資源の活用で生産性向上と飼料費を低減。36人の従業員中、9人の女性が繁殖や哺育などを担当。定期的に成分分析した給餌など管理法を工夫し分娩(ぶんべん)事故率は3%以下だ。
多角化経営部門で選ばれたなかひら農場(長野県松川町)は、果肉入りりんごジュースなど独自の加工品を開発する。労働基準法に準拠する就業規定を設け、社員の半分以上を占める女性が働きやすい職場づくりに力を入れる。果樹園に男女別の水洗トイレやロッカーを設置、女性専用の運搬車などを導入する。課長職以上の半分は女性で、会社の中心的な役割を担う。
内閣総理大臣賞「女性の活躍」部門を受賞したのは、ベビーリーフを生産・販売するみっちゃん工房(熊本県益城町)。従業員の生活様式が変わっても長く働き続けられるよう労災保険や雇用保険への加入、産休・育休制度を完備し、完全週休2日制、子どもの看護・介護休暇も用意した結果、退職者が減り、求人数を上回る正社員の応募が来ている。
農業、農村の課題を解決するには女性の力は不可欠だ。男女別のトイレ設置などハード面だけでなく、産休・育休制度の導入、子育てに合わせた柔軟な働き方などソフト面での支援も重要だ。所得を確保するには女性や若者、外国人など多様な考え方を経営に取り入れる必要があり、経営者の意識改革も求められる。女性が輝く未来は明るい。