[論説]進む米等級検査 高温影響・対策 検証を
記録的な猛暑だった23年の1等米比率は60・9%(24年3月末時点)と過去最低だった。農水省は、出穂期以降の高温で白未熟粒が作付面積の5割程度で発生したとの調査結果を出した。一方、24年産米は、8月末時点で1等米比率が63・7%と、前年同期を5・2ポイント下回り、出足は低調だ。ただ、東北など主産地の検査結果が本格的に反映されるのはこれからで、同省は各検査機関への聞き取りも踏まえ、今後は1等米比率は上昇していくと見通す。
主産地の中で比較的検査が進んでいる千葉県では、1等米比率が前年同期を10・6ポイント下回る82・1%、茨城県も同14・2ポイント下回る63・5%となった。今年は高温による斑点米カメムシ類の増殖が懸念されていたが、同省によると両県で斑点米カメムシ類による着色粒被害が目立った。
一方、三重や高知、宮崎の各県などでは高温に伴う白未熟粒の発生が広がった。白未熟粒を抑えようと、穂肥(追肥)の回数を増やすよう呼びかける産地もあった。
気がかりなのは「猛暑下での野外作業は体への負担が大きく、対策を徹底しきれない」との声が聞かれたことだ。炎天下で重い動力散粒器を背負って穂肥を散布する作業は、体への負担が大きく、熱中症のリスクもつきまとう。
参考にしたいのが、ドローンの利用だ。営農管理システムも活用して圃場(ほじょう)内の生育むらを把握し、箇所に応じて施肥量を調整する可変施肥をドローンで行う取り組みがある。農家の負担軽減に加え、肥料高騰が続く中で無駄のない効率的で、環境に配慮した施肥につながる。
1等米比率が23年産で低迷した新潟県は、24年産は8月末時点で84・7%と前年同期を43・7ポイントも上回り、順調な出足となった。穂肥や水管理の徹底といった高温対策に加え、夜温が23年ほど厳しくなかったことが奏功したとの声がある。夜温が高いと稲が夜間に養分を消耗し、白未熟粒の発生につながる。
東北の主産県でも、熱帯夜の日数が前年の約半分だったことが、1等米比率の回復につながったとの見方もある。
24年産米の等級が本格的に判明するのはこれから。動向に注視しつつ、高温の影響を丁寧に分析して対策を検証し、高齢化が進む農家の負担を軽減できる持続可能な米作りを目指したい。