[論説]きょう衆院選投開票 政治託せる人に一票を
政治資金収支報告書への不記載、いわゆる「政治とカネ」問題による政治不信は、いまだ拭えていない。今回の衆院選はまず、政治への信頼回復を問う選挙である。
同時に有権者も問われている。政治への無関心の結果、一部の政治家や派閥が法を軽んじるのを許してきたのではないか。投票率を見ればそれは明らかだ。前回(2021年10月)衆院選は55・93%、前々回(17年10月)は53・68%。7割あった投票率は徐々に下がり、近年は有権者の半数近くが棄権している。
政治への関心が薄れれば、政策も国民から遠のく。今回の選挙は「政治とカネ」に次いで物価高が大きな争点となる。しかし、大企業が軒並み最高益を上げた時ですら、実質賃金は抑えられてきた。富裕層の富が分配されることもなかった。家計は苦しい。国民自身がまず政治に関心を示さなければ、国民に寄り添う政治などできない。
石破茂首相は、国民一人一人に正面から向き合い、「納得と共感を得られる政治を進める」と表明した。政治として当たり前のことだが、それができていなかったとの認識がにじむ。中でも農業政策は実態と懸け離れた“改革”に翻弄(ほんろう)される時期が長かった。この衆院選で、農業政策を巡る論争に農業者の声は届いているだろうか。
5月末には、農政の憲法である食料・農業・農村基本法が改正された。国内の生産基盤の弱体化に歯止めがかからない一方、海外に食料や資材を依存するリスクが高まり、食料安全保障の確保を掲げて改正に踏み切ったのは、政治の適切な判断である。
ただ、具体的な政策づくりは、これからが勝負。生産費を考慮した価格形成は、実効性を確保できるか。米政策は農業者・消費者にとって安定した制度になるか。農業者と農地の減少に歯止めをかけられるか。食料安保に必要な予算は十分確保できるかが、問われている。一方の野党は、農業政策の柱に所得政策の強化を掲げる。各候補者はこうした争点をどう訴えたのか、しっかりと見極めて投票先を選びたい。
選挙では、各党の議席の増減が最も重い。それにより、私たちの将来が大きく変わる。同時に「投票率」という結果も重い。有権者がどれだけ政治に関心を持っているか、投票で示す必要がある。