[論説]有機給食の推進 地域ぐるみの連携が鍵
フォーラムでは茨城県常陸大宮市が先進事例を報告する。同市は人口約3万8000人で、耕地面積が3510ヘクタール。鈴木定幸市長は「子どもに最高の給食を届けたい」と2020年の市長選に立候補し、学校給食を100%有機農産物にすると公約に掲げた。23年11月には、農水省が進める有機農業の生産から消費まで、地域ぐるみで取り組む「オーガニックビレッジ」を宣言。有機農業を振興することで、28年度までに「100%オーガニック給食」の実現を目指す。食べることを通して生産者と消費者が有機的に結び付き、地域農業の理解と連携を深める行政主導の取り組みを評価したい。
有機農業の推進は、行政に加え、JAとの連携が重要だ。JA常陸は、JA出資型法人のJA常陸アグリサポートを中心に有機農産物の生産と流通、消費促進に力を入れている。同市と連携し、22年度から有機野菜の栽培を始め、市内の学校給食に有機野菜や米を提供している。気候変動が激しい中、土づくりを基本とした環境に負荷をかけない有機農業の実践拡大は、持続可能な農業を進める上で欠かせない。行政とJA、地域住民が一体となって学校給食を変える試みであり、こうしたうねりを広げたい。
農水省によると22年度末時点で、全国で193の市町村が学校給食に有機食材を使っている。前年度と比べて56市町村増えた。「オーガニックビレッジ」を宣言した全国129市町村のうち、9割で「有機給食」を進めている。
有機農業の推進に向けて求められるのは、生産と需要をマッチングし、学校給食の入札や契約書などの煩雑な行政文書の作成を効率化するシステムの構築だ。
韓国農水産食品流通公社の運営する「公共給食統合プラットホームシステム」が参考になる。このシステムの導入により、自治体ごとに運営する学校給食センターの管理を集約化。食材を提供する農家や自治体などがシステムに登録し、食材の入札から契約、助成金の精算などを担う。全1万2038校ある韓国の小中高校の8割が同システムを利用している。23年は、学校に提供された農産物の7割を「親環境農産物(有機農産物)」が占めた。
地域の有機農産物を学校給食に活用するのは世界の潮流だ。有機給食を広げよう。