[論説]第2次石破内閣に注文 所得向上へ具体策急げ
政府・与党は、政策協議を行う国民民主などの協力を得ながら、2024年度補正予算案や25年度予算案を成立させ、政権を維持する方針だ。
だが、課題は山積みだ。石破首相は政治改革に早急に取り組む考えを示すが、野党は政治資金規正法の再改正や政策活動費の廃止、第三者機関の早期設置などより厳しい対応を求める。「政治とカネ」問題を解決しない限り、国民の信頼は得られない。自民党は衆院選大敗を謙虚に反省し、透明性の高い厳格な政治改革を断行すべきだ。
政策協議や合意も容易ではない。国民民主が主張する、年収103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しや、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」の凍結解除などは大幅な税収減となるだけに、財源確保策が課題となる。合意点を見いだす努力がこれまで以上に求められる。
生産資材の高止まりで苦しむ農家の所得確保に向けた協議も大きな論点となる。国民民主の玉木代表は、衆院選公約に盛り込んだ新たな直接支払制度「食料安全保障基礎支払い」の実現を重視している。農業を続けられる農家所得を確保するのが狙いで、基礎支払いの対象範囲や単価などによっては、現行制度を根底から見直す必要がある。
石破首相は衆院選で議席を失った小里泰弘氏の後任として、新農相に江藤拓・自民党総合農林政策調査会長を起用した。日本創生を旗印に掲げる石破首相として農業の活性化、地方創生に最優先に取り組む決意の表れだろう。
ただ、農家所得の確保策を巡り、与党と国民民主では主張が食い違っている。直接支払制度の導入を強く求める玉木代表に対し、石破首相は「(農家の)創意工夫や日々の努力にブレーキをかけ、農地の集積・集約が進まなくなる恐れがある」と慎重姿勢を示す。農水省も生産コストを考慮した適正な価格形成を目指す方針で、溝は深い。
輸入の肥料や飼料などの価格は高止まりが続き、農家経営を圧迫する。担い手不足は深刻化し、耕作放棄地の増大に歯止めがかからない。食料安全保障の危機は迫っている。国民の食を支える農家所得の確保・増大は急務で、具体策を早急に示してほしい。
党派を超えて、「農業農村を守る」という強い覚悟で臨んでもらいたい。