[論説]財務省の「水活」改悪 飼料用米の支援続けよ
政府は、来春の食料・農業・農村基本計画の改定に合わせ、2027年度以降の水田政策について検討する方針だ。これに対し、財務省は11日の財政制度等審議会で「食料自給率に過度に引きずられることなく、国民負担最小化の視点は重要」と提起した。来年度以降の飼料用米の交付単価引き下げに加え、27年度以降の水田政策では、飼料用米を「交付対象から外すべき」だとも主張した。
自民党は、先の衆院選公約に「水田活用のための予算は責任をもって恒久的に確保する」と明記している。この文言は、飼料用米などを念頭に置いた過去の水田政策に関する同党の決議に基づくものだ。公約をほごにすれば農家の信頼を失い、政治不信はさらに大きくなる。
第2次石破内閣の発足を受けて、農相には自民党総合農林政策調査会長を務めた江藤拓氏が就いた。江藤農相は就任後、農業予算の増額が必要との認識を示した。
食料・農業・農村基本法の改正を受け、政府は今後5年間で農業の構造転換を集中的に進める方針だ。今後編成する24年度補正予算と25年度予算はその原資となる。万全の財源確保が求められる。
一方、財務省は「依然として(農林水産関係の)予算総額は高水準にある」と抑制を求めている。だが、全国で老朽化が進むカントリーエレベーターなど共同管理施設の整備を例にとっても、建設資材や人件費は上がり、同じ予算額でも従来ほどの政策効果は見込めない。ここにきての予算抑制は政府の掲げる食料安全保障の確立に逆行する。
また、会計検査院は、農水省の補正予算事業などについて予算の繰り越しの多さを指摘した。国民の税金が無駄に使われていないかを点検するのは当然だが「木を見て森を見ず」の感も否めない。補正予算は、年度内の処理が求められ、ただでさえ人手不足に悩む自治体の負担が大きく、事業採択の手続きが間に合わないケースは多くなる。
農業予算の多くを補正に頼る、いびつな予算編成にこそ根本原因があるのではないか。専門家からは、緊急を要する経費を計上すべき補正予算で、本来業務に当たる財源を賄っているとの指摘もある。農水省は財政当局にしっかり反論し、国民に対しても農業予算の必要性について説明を尽くすべきだ。