[論説]JAグループ政策要請 将来描ける対策を急げ
農水省は2030年に、農業経営体が54万になるという見通しを示した。20年の108万から10年で半減する。経営体の減少で、農地は92万ヘクタールが耕作されなくなる恐れがある。将来にわたって、米をはじめ必要な食料を安定的に確保できるのか。見通しは厳しい。
生産基盤を立て直すには、担い手や農地をどう確保するのか、将来像を描く必要がある。JAグループの重点要請では農業者と農地、国内で生産できる肥料など生産資材の確保について、それぞれ「意欲的かつ適切な目標」を設定するよう求めている。
耕作面積の減少は、特に米などの土地利用型作物で顕著だ。持続可能な米政策の具体化は、基本計画の焦点だ。
JAグループは、主食用米を持続的に生産できる生産基盤の維持を重視している。需要に応じた米生産と、麦や大豆、飼料用作物など輸入依存度の高い作物への作付け転換で、米の需給と価格を安定させることが重要だ。一方、農業者の減少を見据え、主食用米を供給する生産基盤を維持できなければ、食料安保の確保は危うい。
中山間地域など地域の特性に配慮した支援へ、重点要請では新たな交付金の創設を求めている。不測時を想定した備蓄の充実なども合わせ、水田政策を一体的かつ集中的に議論すべき局面にある。
農産物の適正な価格形成に向け、政府は来年の通常国会に法案を提出する方針だ。ただ、法制化するに当たり、生産コストを十分に考慮し、農家が再生産できる仕組みにしなければ法制化の効果は薄れる。根拠となるコスト指標の設定をきめ細かくし、幅広いデータを活用すべきだ。不適正な商慣習がはびこらないよう政府は常に把握し、必要に応じて是正する必要がある。
基本計画策定と共に欠かせないのが、裏付けとなる予算の確保だ。政府・与党は改正食料・農業・農村基本法の初動5年間を、構造転換を集中的に進める期間とした。各地で老朽化が進む共同利用施設の整備予算をはじめ、食料安保の確保に向け、生産基盤や安定供給を支える予算を大幅に拡充する必要がある。
JA全中と全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)は22日、都内で全国大会を開き、重点要請の実現を訴える。国を挙げて農業農村を守る強い意志を共有したい。