きっかけは3月、東日本大震災で妻を失った宮城県気仙沼市の米農家の佐藤誠悦さん(72)と、同市で追悼コンサートを開いた藤波さんをコラムで紹介したこと。以来、藤波さんは命や環境、農業に強い関心を持ち、四季の朗読と音楽でつづるコンサートを企画、「芸能界きっての愛読者」を自称する永島さんとコンビを組んだ。
朗読に合わせ藤波さんは「花は咲く」「人生の扉」「乙女の祈り」「愛の讃歌」「パリは燃えているか」など17曲を披露。曲の合間にはコラムに紹介された農家らが、自身の思いを語った。
農作業安全のコラムでは、手作りお守り「東京ハッピーリング」を紹介。仲間とリングを作り続ける東京都西東京市の矢ケ崎静代さん(75)は、「機械化が進み、農家は日頃から怖い思いをしている。北海道には農機事故で夫を亡くした仲間もいる。私たちでできることはないかと考え、英国のお守りをヒントにハッピーリングを作り続けている。お守りを見て、今日も安全に仕事をしようと思ってほしい」と願いを込めた。
乳牛を淘汰する酪農家の葛藤を描いたコラムで紹介したのは、自身の気持ちを短歌に込めた北海道岩見沢市の今西真知子さん(67)。「牛さんたちは1日も休まずに働いてくれている。私も夫の入院で、休みなく働いた経験がある。数年前、牛飼いを卒業してしまったけれど、生き物を育む全国の農家の思いが必ず報われる明るい未来になってほしい、と心から願っている」と語った。
震災で妻を失った悲しみを描いたコラムで取り上げたのは、佐藤さん。「あまりにもすてきな朗読とピアノ演奏を聴かせてもらい、涙が止まらなくなった。コラムはまるで物語のよう。永島さんの朗読は語りだ。語る人の思い、人間性が響くんだなあ。藤波さんのピアノは命の旋律。心に染み入った」と涙を拭った。
朗読
永島敏行さん(俳優)
ピアノ
藤波結花さん(ピアニスト)
来場者の声
会場は、関東はじめ、北海道や東北、中部など全国からの観客で埋まった。読者以外の方も多く、思い思いの感想が寄せられた。「新聞コラムと音楽のコラボは他になく、今までで一番感動するコンサートでした」
「心に染みました。生きることの意味、かけがえのない人のために日々を大切に過ごしたいと思いました」
「珠玉の言葉で描かれた日本の美しい風景や人間模様。まさしくピアノと語りの協奏曲でした」
「涙腺崩壊、命のありがたさに感謝です。素晴らしい企画をありがとうございます」
「実体験者の話は心に刺さりました」
「リアルな農の現状を知ることができました」
コンサートをきっかけに「『四季』をもっと読みたい」「ぜひ全国ツアーを」との声も相次いだ。
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