[論説]サツマイモ害虫の教訓 早期発見と通報が第一
同市では2023年3月から1年8カ月、同害虫の緊急防除が続いたが、11月27日に解除となった。根絶できたのは国や県、市、JAとぴあ浜松、農家らが一体的に対応した成果といえる。
発生区域内では、食料生産としてのサツマイモ栽培だけでなく、家庭菜園や食農教育での栽培も禁じられた。アサガオにも寄生するため、学校の授業での栽培も取りやめになった。住民には回覧板で注意・理解を促し、外国人向けのチラシも作成。海岸のハマヒルガオなどの雑草の抜き取りには10日間で延べ700人が参加した。スーパーでは芋を密閉して販売するなど、さまざまな対策を徹底したことが根絶につながった。
一方で、行政などからの周知が他の地域に伝わらないことが課題となった。区域外からサツマイモのつるが投棄されたこともあり、県では「理解・協力を得るのが難しかった」とみる。
同市では今後、サツマイモ栽培が再開されるが、再侵入に備えて調査を継続する方針だ。農家や地域住民は、サツマイモやアサガオの栽培残さが出た場合は、処分を徹底する必要がある。
病害虫の拡大を防ぐには早期発見、早期通報、早期防除が鍵だ。同市内でアリモドキゾウムシが見つかったきっかけは、一般市民からの通報だった。市民対応の窓口から農業の担当者に情報がつながり、教育担当を含めた複数の機関が連携したことが奏功した。農場を回り、異常があれば、ためらうことなく病害虫防除所や農業改良普及センター、JAなどに相談をしよう。
二つ目に注意したいのが、フリマアプリや通販サイトだ。農作物の種苗がネットで簡単に入手できるようになったことで、購入した先でどんな病害虫が発生しているか分からなくなり、注意が必要だ。
温暖化に加えて新型コロナの規制が緩和され、世界各地からインバウンド(訪日外国人)が増え、オーバーツーリズムが問題になっている。
特に年末年始を控え、国内外で帰省や旅行などの移動が増える。農家にとっては、未知の病害虫やウイルスが侵入するリスクが、一層高まる。
いったん侵入を許せば、根絶までに時間がかかる。国内では空港や港などでの水際対策の強化に加え、産地では万一の時の対策を事前に考えておく必要がある。