[論説]地域共生コンビニ 暮らしのインフラ守れ
農林水産政策研究所によると、食料品店まで直線距離で500メートル以上離れ、65歳以上で自動車を使用できない人を指す「食品アクセス困難人口」は、全国で904万人と推計、65歳以上人口の4分の1を占める。少子高齢化が進む中で、交通の便が悪く、食料品を買えない人をこれ以上増やさないためには、「地域共生コンビニ」のような新たな仕掛けが求められる。
大手のローソンが手掛ける新たな地域共生コンビニは、全国に8店舗ある。通常のコンビニとの違いは、地元資本のスーパーやJAと連携し、生鮮食料品を充実させている点にある。一般的に民間が出店したがらない小さな商圏で店舗を構えるのが特徴だ。
行政も、地域共生コンビニの出店を支援している。11月に開業した鳥取県八頭町もその一つで、昨年9月に閉店したスーパーの空き店舗を利用、県と町が開業費用の一部を補助した。町によると閉店で買い物ができなくなった地域が他にもあり、「出店の動きがあればまた支援したい」としている。
店舗を維持する人員確保も課題となる。11月、秋田県由利本荘市の鳥海町笹子地区で誕生した東北初の地域共生コンビニは、スーパーから業態を変えた。運営するJA秋田しんせいの子会社、ジェイエイ秋田しんせいサービスは、「少人数で店舗運営できるのがコンビニの利点」とみる。笹子地区は市内中心部から片道45キロ離れた山間部にあり、人員確保は難しいだけに、買い物環境の維持に懸命だ。
地域共生コンビニは、へき地でも都市と変わらない商品が並び、若者にとっても魅力となる。だが一方で、地域の食文化を意識して、地方ならではの商品をそろえる必要もある。笹子地区では、JAオリジナル「きりたんぽ」などの商品を店頭に並べ、利用者の声を反映した品ぞろえにしている。運営母体がJAだけに地産地消を意識して、地元農産物を充実させたい。
商圏が小さいため「採算が悪い」と見切りをつけ、地域から撤退する店は多い。そんな時だからこそ、地域共生コンビニは過疎地に暮らす住民にとっては支えとなる。
全国各地で地域共生コンビニの需要は根強い。だが民間だけでは限界がある。国や自治体は「暮らしを守るインフラ」と位置付け、積極的に出店を支援してほしい。