[論説]JAの女性参画 多様性確保し基盤強く
JAグループは第30回JA全国大会決議で、女性比率を①正組合員30%以上②総代15%以上③役員(理事、経営管理委員、監事)15%以上――とする目標を掲げる。JA全中の調査(7月末時点)によると、それぞれ23・8%、11・5%、11・2%。前年比でいずれも増えたが、目標とはまだ開きがある。
506JAのうち、3目標を全て達成したJAは20。一方で、いずれも未達成なのは202JAに上る。さらに見落とせないのは、女性役員が一人もいないJAが4道県74あること。女性参画の推進は道半ばだ。
役員だけでなく管理職の女性登用も加速させる必要がある。JAの係長以上の管理職の女性比率は22・1%。課長以上に限ると12・5%、部長以上だと4・2%にとどまる。部長以上の比率は前年を下回っており、停滞感は拭えない。
女性役員・管理職の増加には、組合長ら経営層が女性の積極登用への意識を高める必要がある。女性政策に長く関わっている村木厚子・元厚生労働次官は日本農業新聞のインタビューで、「女性には、『よほど優秀でなければ管理職になってはいけない』という意識が根強い」と指摘。不安を持つ背中を優しく押し、新たな地位や環境を与え、支えていく大切さを説いた。
村木氏は自身の経験も踏まえ、「背伸びやジャンプをしないと見えない景色も、階段を1段上るだけで遠くまで見通せるようになる。その1段を上れるよう後押しするのもリーダーの役割」と語った。女性一人一人の見える景色が変われば、組織として見渡せる世界も広がる。それは、JAが多様な課題に対応するための足腰を強くするだろう。
JAにとって深刻な課題になっているのが、採用難や離職の増加だ。人材獲得競争が激しい中、若い世代は収入などの待遇だけでなく、多様な人材や意見が反映されるのか、育児・介護との両立が可能かなどを注意深く見ている。
地方から都市部への転出は、特に若年女性で顕著な状況が続く。就業意欲に応じた職場の存在の有無が大きな要因だといわれる。地方の重要な働き口とされてきたJAも、今や若者や女性に「選ばれる」職場になれるか大きな岐路に立っている。女性参画を加速させる道筋を全国のJAで描かなければならない。