[論説]JAの営農指導強化 中核機能発揮へ改革を
農業経営は、大規模法人から家族経営、「半農半X」など多様化している。人手不足の中、営農技術のデジタルトランスフォーメーション(DX)化も進み、JAの営農指導員には幅広い役割が期待されている。
営農指導事業を中核機能として位置付けた背景には、営農面を糸口に、くらしを含めた農家の実情を総合的に把握したいとの思いがある。組合員の営農の課題解決が、信用や共済、販売、購買など幅広い分野の課題把握につながるだけに、営農指導事業を「JAの中核」と位置付けた今回の方針を歓迎したい。
JAの職員数は、ピークだった1993年当時と比べて4割減少、営農指導員は約6000人減り現在1万2287人(2022事業年度、総合農協統計表)となっている。職員が減り続ける中、全中は営農指導員が他の業務と兼務する比率が高まっているとみて、役割分担の見直しや総合的な人材管理の必要性を打ち出した。
重視するのは人材育成だ。JAの営農指導員は、信用や共済担当の職員に比べて、資格や役職の将来像を示しにくい側面があった。そこで今回策定した方針では、地域営農マネージャーやJA農業経営コンサルタントといった上位資格の活用や、管理職研修などで、キャリアの道筋を具体化し、各JAでの人材育成に位置付ける。具体的に対応できているかをチェックするリストもあり、活用したい。
全中が20日に開いたJA営農指導実践全国大会では、JA兵庫六甲が最優秀賞に選ばれた。デジタル技術などを活用したエダマメ産地化では、全ほ場の防除や収穫の目安を共有できるようになり、DXで業務を効率化できた。若手職員の発想、能力を生かした営農指導を、前例にとらわれず進めることが大切だ。
今回の八つの発表は、動画として年度内に公開される予定という。課題をどう捉え、計画を立てて実行、検証し、改善するかの「PDCAサイクル」をどう動かしたのか、ぜひ確認して各地の営農指導に取り入れてほしい。
地域の持続的農業の普及や温暖化への技術対応など、営農指導員には高い専門性が求められており、やりがい向上やロールモデルの提示が重要となる。営農指導を中核とした農業所得の増大へ、JAの使命を発揮しよう。