[論説]農村の「こどもの日」 自然の中で宝を探そう
NPO法人「PLAY TANK(プレイタンク)」が、子どもの頃、平日の放課後にどのくらい外で遊んだかを調べたところ、「2時間以上」と答えた割合はおじいちゃん、おばあちゃん世代は82%、お父さん、お母さん世代は54%だった。だが、今の子ども世代はわずか9%に。少子化で遊び相手が近くにいないことや、離れていても友達と遊べるオンラインゲームや、好きな動画を楽しめるユーチューブが登場したことなどが背景にある。
外遊びは農村でも減っている。田んぼの近くに住んでいてもタニシを知らない、昆虫採集をしたことがないという子どもは少なくない。周りに自然があっても興味がなければ、価値を知ることはない。多様な虫や鳥、魚など自然の恵みを伝えるために、まずは子どもと屋外に出かけるところから始めよう。
おじいちゃん、おばあちゃんは、虫や植物を地域の方言で教えてはどうだろう。例えば山菜「ミヤマイラクサ」の方言は「アイコ」。鋭いとげがあるけれど、ゆでると癖がなくておいしい。茎からは丈夫な繊維も取れる。五感をフルに使った野外体験は、ネットの空間では決して得られない貴重な経験となる。
お父さん、お母さんは、子どもと地域を散歩してみよう。道端にポピーのようなオレンジ色の花を見つけたら、それは外来植物の「ナガミヒナゲシ」かもしれない。一つの果実に種が1600粒もあるため、繁殖力がすさまじい。外来植物が地域に増えていることを知ることも発見だ。
今はスマホで撮影するだけで花の名前などが分かる便利な時代。体験とデジタルを融合させれば、知識がなくても楽しめる。田んぼの生き物を観察したり、野菜の苗を一緒に植えたりするのもいい。外遊びにはいい季節である。
厚生労働省の調査では、昨年自殺した小中高生は529人とこれまでで最も多くなった。自然体験はけがをするかもしれない、触ると虫が死んでしまうかもしれない。それも命の大切さを学べる貴重な機会であり、体験から学べることは多い。
農村で暮らしていると、足元の宝が見えにくい。都会に一度、出た人が地域に戻って良さに気付くこともある。身近な動物や植物に接することで子どもの感性を磨き、地域の価値を発見しよう。