[論説]畦畔の草刈り 組織化し負担減らそう
畦畔に草が生い茂ればイネカメムシなどの害虫のすみかとなるため、刈って見通しの良い状態を保つ管理が必要となる。ただ、経営面積の拡大や近年の猛暑が加わり、除草作業を「一番の重労働」に挙げる農家は多い。
こうした課題を解決しようと、支所協同活動として負担軽減に乗り出したのが、長野県松本市のJA松本ハイランド和田支所だ。「畦畔の草刈り作業の負担を減らしたい」との現場の声を受けて4月、和田地区畦畔管理サポート組合を設立した。
組合員有志26人が「草刈りサポート隊」を結成し、業務委託を受けた66ヘクタールで畦畔の管理作業をスタートさせた。サポート隊員は同支所協同活動運営委員会の構成メンバーや、地区内にある農家組合の組合長経験者から募った。活動の主体がJAの組合員であることに大きな意義がある。
組織化と同時に、運営する上で欠かせないのが安全対策の徹底だ。特に、注意が必要なのは、刈り払い機を使う際の「飛び石対策」。回転刃に石が当たり、目に当たれば最悪、失明する恐れがある。自分だけでなく人にけがをさせたり、車に石が当たって傷を付けたりする可能性もある。
作業をする時の対策として①作業前に、作業をする範囲の異物を取り除く②飛散を防止する刈り払い機装着カバーや、作業範囲にネットを張る③作業者はヘルメットやゴーグル、手袋などの保護具を着用する④労災保険やJA共済などに加入する――などがある。刈り払い機による農作業事故は毎年、多発しているだけに対策を万全にして安全作業を進めよう。
ただ、畦畔の草刈りは農作業の一例に過ぎない。農家の高齢化が進み、労働力が不足する中、担い手に重くのしかかる作業負担をどう分散し、軽くするか。これは「食と農業を地域全体でどう守るか」という課題に直結する。農業をしていない人も、自分の地域の問題として捉え、意識を高めることが大切だ。各自治体には農業、生活の部署連携を通じた「環境整備支援」へ広範な事業展開と、住民への啓発活動を求めたい。
JAも准組合員に農業の現状を発信し、農作業に加わる仕組みづくりを進めてほしい。田園の景観を地域ぐるみで整えることで絆も深まるだろう。助け合うことでしか地域の農業、環境は守れない。