[論説]国際協同組合年の意義 国会決議で意思示そう
IYCは、2012年に続き、異例の2回目となる。飢餓や貧困、格差と分断が進む中、国連はSDGs(持続可能な開発目標)の達成には協同組合の役割が欠かせないとの評価だ。国連総会の決議では、食料安全保障などの強化に向け、各国政府に対し協同組合への支援を求めた。
石破茂首相は、2月のIYCキックオフイベントで、「協同組合の社会貢献が国民に十分理解されるよう、可能な限り支援する」とのメッセージを寄せた。持続可能な食と農の在り方が問われている今こそ、具体的な支援策を「骨太の方針」などの国家戦略に盛り込んでほしい。
国会の役割も大きい。IYC全国実行委員会は、この好機を捉え、協同組合の振興に向けた国会決議の採択を働きかけている。昨年末、超党派の「協同組合振興研究議員連盟」(会長=森山裕自民党幹事長)に実現を要請。同議連を中心に今国会での決議採択へ詰めの調整を急いでいる。
検討されている決議案では、協同組合の定義・価値・原則を尊重し、持続可能な地域社会づくりの有力な主体と位置付け、その発展を後押しする内容となる見通しだ。
わが国は協同組合大国。JA、生協、森林組合、漁協、労働金庫、信用金庫など各分野で約4万の協同組合が活動し、延べ1億人が組合員となっている。農林水産業産出額の半分以上を占め、生み出す付加価値は約4兆4000億円に上り、産業や暮らしを支える重要な社会インフラの役目を果たしている。中でも総合事業を営むJAは、世界の協同組合のモデルとされている。
ただ、協同組合への理解度はまだ低く、IYCの存在も浸透していない。今、協同組合ネットなど各県域組織では学習会や交流会、寄付講座、記念講演など、協同組合への理解と周知を広める取り組みを進めている。
協同組合は、傷んだ社会を修復し、孤立しがちな人と人を結び、人間らしい働き方を追求する助け合いの組織だ。国会の総意として、協同組合の役割や活動を正当に評価し決議する意味は大きい。前回のIYCは、政治情勢で決議ができなかっただけに、今回は党派を超えて衆参で国会の意思を示してもらいたい。
決議にふさわしい、地道な日々の協同活動が大切なのは言うまでもない。その先には協同組合基本法など協同法制の整備も展望できるだろう。