[論説]米粉用米の振興 需要逃さず生産強化を
小麦の主要輸出国であるロシアによるウクライナ侵攻は終息が見通せない。輸入小麦の代替として国産米粉への期待が高まっていただけに、米粉の生産・消費とも底上げを図りたい。業務用価格は、1キロ当たり小麦粉が140~150円、米粉は140~340円と価格差も縮まってきた。スーパーなど、身近な売り場で商品を購入できるようになり、使用する菓子店や飲食店も増えている。
小麦アレルギーの人でもグルテンフリーの米粉なら食べられる。吸油率も低いため、唐揚げにも最適。こうした米粉ならではの特性を発信し、消費を拡大したい。
農水省によると米粉用米の需要は、2025年度が6万2000トンと、データのある09年度以降で最多となる見通し。だが、近年は米粉用米を確保できず、注文を断る米粉メーカーもあり、チャンスロスにつながっている。同省は30年度には生産量を13万トンに引き上げる目標を掲げるが、主食用米の価格上昇が続く中、需要に応じた米粉用米の生産と安定供給が課題だ。
同省が公表した作付け意向調査(1月末時点)によると、25年産の米粉用米の作付面積は、前年産と同じ6300ヘクタールの見込み。平年並みの作柄だと生産量は3万トン超となり、需要を大きく下回る。
24年度の需要量は、当初6万4000トンと見通していたが、実際は5万4000トンにとどまり、同省では「米粉用米を確保できないため、一部の米粉メーカーで受注を抑える動きがあり、需要を取りこぼしたことが要因」(穀物課)と分析する。在庫調整で対応したメーカーもあるが、需要と生産の乖離(かいり)が広がれば、国産米粉の需要が輸入小麦に一層、奪われかねない。
米粉用米の生産が伸び悩む最大の課題は、主食用に比べて農家手取りが低い点だ。多収品種の導入や加工品の開発、消費地との連携などで、主食用米と遜色ない所得の確保につなげる必要がある。
昨年、同省は部局横断で米粉の利用拡大を呼びかける有志によるプロジェクトチーム「米粉営業第二課」を結成した。1年限定の取り組みだったが、今こそ続けるべきだ。
産地と関係者が連携し、着実に需要を掘り起こしてきた努力を無駄にしてはいけない。米粉を一過性のブームで終わらせてはならない。