[あんぐる]食事に心に花添えて 食用菊「阿房宮」(青森県南部町)
「阿房宮」は、青森県南部や岩手県北部の一部地域が産地。来歴は諸説あり、奥州菊の産地だった同地周辺で、中国から渡来した観賞菊から実生作出した品種ともいわれている。原産国にちなみ、中国の皇帝が建てた、栄華な宮殿の名が、品種名として定着した。花びらはシャキシャキとした歯応えと甘味があり、香りが良い。
南部町の山あいにある5アールの畑で生食用の「阿房宮」を収穫していた田村ミ子さん(74)は「今年の花は小さいけどよく咲いた。この地域の秋の色は、紅葉と菊なんですよ」とほほ笑む。「重量が軽く、きれいな仕事」とやりがいを感じている。
生食用の収穫が終わる11月になると、咲かせきった花を「干し菊」に加工する。花びらをむしり、円形の薄いざるに入れて100度で30秒ほど蒸し、重量が10分の1になるまで機械で乾燥。円盤状に仕上げる。
12アールで栽培し、加工も手掛ける坂本弘さん(63)は「水で戻せば一年中、香りの良い菊の花が食べられる」と勧める。 同地の秋を彩る食用菊は、年々減っている。JA八戸によると、30年ほど前は20万枚を超す干し菊の出荷があったが、現在は4万6000枚(2020年産)に縮小。今年は、新型コロナウイルスの影響を受けてさらに減る見込みで、出荷する生産者は10人ほどだ。JA営農部の川上守さん(52)は「かつては山が菊の畑で黄色くなったが、食の変化やコロナで需要が減っている。料理に花を添える余裕があると良い世の中だよね」と話す。(染谷臨太郎)
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