
ブドウ「シャインマスカット」の開花異常(未開花症)発生の報告が、山梨県内の高校からも本紙「農家の特報班」に届いた。生徒に、発生した花穂の観察や調査、対処法の学習をしてもらい、貴重な教材として生かしているともいう。詳しく話を聞いた。
発生を報告してくれたのは、笛吹市にある県立笛吹高校。同校には3学年で計84人が学ぶ果樹園芸科があり、約10アールの農場でシャインを栽培する。開花異常の房は同校の教員が5月下旬に見つけた。以前にも発生した年があったが、昨年は出ていなかったという。
発生を受け、同校は3年生の授業で開花異常を取り上げ、花穂を観察した。「出てほしくないが、教材としては貴重なので役立てた」と同校の中村芳仁農場長。生徒が確認したところ、園地の1、2割の木に異常が見られ、花穂の4割まで症状が及んでいたものもあった。開花異常の対処法としては、房の形を作る花穂整形の際、異常が発生しにくい上部の軸(支梗)を残す方法が知られる。これも生徒の手で行った。
実は同校では、農園で症状が出る数日前の授業で、シャインの開花異常を取り上げたばかりだった。最近の農業情勢を生徒に意識してもらうためだ。実際に症状を自分の目で確かめた生徒からは「農家にはショックが大きいと思う。心配だ」との声があったという。
発生後に行った定期試験でも開花異常を取り上げた。「未開花症」の名称や症状について出題したところ、普段のテストと比べても正答率が高かったという。同校は症状が出た房を収穫期の9月まで残し、開花異常を観察する授業を続ける。
ただ、同校の農場で収穫したシャインは、JAなどを通じて販売し、収入を得ている。山梨県教育委員会によると、開花異常の影響で販売収入が減ると、同校の農場が受ける県予算の額も減ってしまう可能性があり、同校は授業への影響を心配しているという。