
夏休み終盤の20日、「日本一おいしい給食レシピコンテスト」で2人は最終審査に残った。市教育委員会が主催する市民参加のイベントで、選ばれた料理は給食のメニューになる。2人が作る「かんきつかき揚げバーガー」は、具材のレモンの皮、サツマイモ、レンコン、小松菜、エリンギも、パンの原料の小麦粉も全て今治産。クラス22人みんなで考えたメニューだ。
決戦の舞台に立ったのは、応募118件の中から書面審査を通過した2人1組の10チーム。親子や職場仲間、友人同士とさまざま。調理開始の笛が鳴り、2人は慣れた手つきで包丁を握った。
同市は学校給食の「地産地消」と「食育」の先進地だ。40年以上前から環境に配慮して育てた地元産の米や有機栽培の野菜・果物を使い、食の安全・安心と市産農産物のブランド化を実現。当初の子どもたちは親世代となり地域の食材を愛し、わが子に継承する。岩崎さんや萬上さんの両親もそうで、萬上さんの父、一也さん(40)は「安全・安心」な地元産を使い、化学調味料も極力使わない調理を「当然」と考える。
萬上さんが具材を油に投じ、岩崎さんが揚がったかき揚げをパンにはさんでいく。2人の息はぴったりだ。

「食を通じて親子や友人との関係性が強まれば、大人になると、わが子に同じ体験をさせたいと思うし、郷土愛にもつながる。そんな世代循環が始まりました」。審査員の一人、市教育長の小澤和樹さん(61)が言った。
食の安心 街づくりに
今治市が「地産地消」と「食育」を街づくりの柱に据えたのは1980年代、米国による農産物の市場開放要求が背景にあった。給食食材に外国産が増え始めたことで市民の間に安全性への懸念が高まり、82年の市長選で学校給食の在り方が争点となった。
当選したのは、地域の農産物を使いやすい自校調理式の実現を公約にした新人の岡島一夫氏。今治市立花農協(現JA今治立花)も自校式を提唱し、農家が有機農産物を栽培。栄養士とも連携し、給食の地産化を支えた。

以後、歴代の市長は給食を核に農産物の地産地消を進め、地域経済圏の発展を図った。2021年市長選で初当選した徳永繁樹・現市長も「日本一おいしい学校給食を目指す」と宣言、今回のコンクール開催となった。
市農林水産課によると、給食米は全て同市産の特別栽培米。野菜は有機栽培を含め市産54%(重量ベース)で、県内産を合わせれば61%。パンや豆腐の原料の小麦、大豆も市産だ。