
カイフさんは「1年生の時は給食を食べていた」が、後に食べてはいけない食材が入っていることを知った。イスラム教徒の多い国では、信徒が食べられる食品に「ハラル」認証マークが義務付けられているが、日本にそうした制度はない。
元留学生でレストラン経営者の父カシムさん(45)は「日本では食の問題が一番大変です」という。北区には日本最大のバングラデシュコミュニティーがある。祖国から家族を呼び寄せるケースが増えており、給食問題は焦眉の急となった。
北区では草の根の取り組みが芽生えている。「LIFE SCHOOL桐ケ丘こどものもり」は3月、認可保育所としては全国初のハラル認証を取得、園内の給食調理場でイスラム教徒用の給食も作る。日本の園児用メニューと見た目も同じにした。現在、園児102人のうちバングラデシュ国籍は14人。
園長の赤倉健さん(32)は「今後ますます多様な背景の子どもたちが日本で暮らすようになる。私たちの試みが共生社会への課題提起となれば」と語る。イスラム社会では、食べられないものを使わなければ良いだけでなく、食べても良い鶏や牛も「命」を奪う上での戒律に沿った食肉処理が求められる。
8月27日、同園でバングラデシュの人たちと地域の人たちとの交流会があった。飲食業のアフターブ・ウィディン・アハメドさん(47)が、9カ月の息子の入園申請に来ていた。「自宅周辺ではハラル給食の保育所がなく、この園に入るため区外から家族で引っ越してきた。せめて、子どもには安心できる環境を与えたい」