海外で和食への関心が高まる中、フランス・パリでは、新潟産米を使った“おにぎり”専門店が人気だ。佐渡市の農家らが輸出する鮮度の良い米を使い、小ぶりでかわいらしい形に仕上げる。1個(60グラム)4ユーロ、約680円(1ユーロ=約170円で換算)でも常連客は「日本産の本物を使い、手間をかけて作っているので信頼できる」と通う。農家は「1万キロ離れた国で喜んでもらえて、生産に張り合いが出る」と手応えを語る。
高級住宅街とビジネス街が混在するパリ6区に2021年にオープンした、おにぎり専門店「O-Kome」には、幅広い年齢層の消費者が切れ目なく訪れる。店内には洋菓子店のようなショーケースに、彩り豊かなおにぎりが並ぶ。23年には2店舗目も開店した。
具材はレギュラーメニューとして「梅しそ(菜食主義者対応)」の他、大葉とサンショウが利いた「焼きみそ」、牛肉とニンジンを混ぜ込んだ「そぼろみそ」の3種類を用意。厨房(ちゅうぼう)では日本人スタッフが調理に当たる。
平日には忙しいビジネスマンが持ち帰り、冷めても食べやすいと人気だ。ボロボロとこぼさずに食べ切れるサイズも受けているという。同店を切り盛りするジル・オリオルさん(54)は「食べたことがない人でも、いろいろな種類を試してほしいから小さく作っている」と狙いを語る。
ロンドン在住の常連客は「この店には3週間に1度、パリを訪れる時に食べに来る」と話す。おにぎりの魅力について「とてもヘルシーな料理」と捉える。
店の味を支える米を輸出する農家の一人が、佐渡市でグローバルGAP(農業生産工程管理)を取得して水稲22ヘクタールを栽培する佐渡相田ライスファーミングの相田忠明代表だ。
18年に伝統芸能の「鬼太鼓」を披露するツアーでパリを訪れ、供給するきっかけにつながった。今年は「コシヒカリ」2トンを送る予定。他に中国へ「こしいぶき」を約20トン輸出する。海外での実績が販路拡大につながる好循環を狙う。
相田代表が重視するのは米の輸送や保管の環境だ。米は真空パックした状態で出荷。パリの同店では温度が安定する地下倉庫に米を保管。15~20度に保ち、除湿して鮮度を維持する。
「文化の異なる国で適切に扱ってもらうには、現地に足を運んで確認することが必要だ」と相田代表。「今年はパリ五輪・パラリンピックも控えている。日本の米のおいしさが広がり、需要の増加につながってほしい」と期待する。