菊地さんは6年前の金農旋風の渦中、痛みと闘っていた。吉田輝星投手が地方大会と夏の甲子園含め投げた計1517球を1人で受け続けていたからだ。「毎試合、手が腫れあがっていた。特に左手人差し指の付け根がひび割れ、我慢との闘いだった」と振り返る。
それを支えたのが、大阪の宿舎での食事だった。持ち込んだ秋田県産米「あきたこまち」を毎日食べ試合に臨んでいた。「決勝まで戦えたのは、食べ慣れた『あきたこまち』のおかげ」と強調する。
菊地さんは今夏、仕事の合間を見て母校をチェック。決勝は球場まで足を運んだ。金農の強さは、エース吉田大輝投手(2年)の存在だけではない。「以前に比べ打てるようになった。走者が出塁するとバントで進めるだけでなく、ヒッティングができる。積極性が出てきた」と分析。「初戦はいい緊張感を持って戦ってほしい」とエールを送る。
秋田県は2年連続で大規模水害が発生、甚大な農業被害に遭っている。菊地さんは、被害状況を確認する仕事にも従事する。それだけに「金農が甲子園で活躍することで、被害に遭った農家に勇気や希望を与えられると思う。できることなら、僕たちがかなえられなかった全国制覇を成し遂げてほしい」と、金農ナインに思いを託す。