「この農地で営農を続けるのは難しい」。同市の畜産農家、柿木敏由貴さん(51)が肩を落とす。自給飼料として今年初めて栽培したソルガム2ヘクタールが倒伏する被害を受けた。
昨年までは飼料用トウモロコシを栽培していた農地だが、獣害に悩まされ、切り替えたばかりだった。獣害が防げる作物として期待していたが、大雨を受け畑は無残な姿に変わっていた。
自給飼料の生産に力を入れ、飼養する肉用牛の餌は全て国産で賄う柿木さん。だが、自給目的の作物は収入保険に加入できず、補償は受けられないという。自給飼料増産を目指す国に対し、「自然災害への対応にもっと目を向けてほしい」と訴える。
清水川巖さん(79)は市内西部を流れる遠別川の氾濫で、主食用米10アール、飼料用トウモロコシ4アールが冠水する被害を受けた。「米は泥をかぶってもう食べられない」と無念さをにじませる。近年は大雨で川が氾濫する頻度も高く、道路のかさ上げ工事が必要と訴える。
同市の下斗米孝喜さん(72)はソバ畑3ヘクタールが冠水した。芽が出ているソバもあるが、「多くが水に漬かり収穫は難しい」と話す。
県によると、13日時点で宮古市でも水稲や野菜の冠水など確認された。岩泉町で豚の斃死(へいし)や生乳廃棄が起きた。遠野市、大船渡市では水田ののり面崩壊など農地・農業用施設の被害が出ている。被害額は調査中としている。
台風5号は13日午前3時に、日本海で熱帯低気圧に変わった。