なだらかな丘陵地に広がる人口1万人の長野県飯綱町。県特産の「シナノスイート」の収穫が最盛期を迎えていた10月16日、JAながのいいづなフルーツセンターでは、ふるさと納税の寄付者に送る「感謝りんご」の選別作業が行われていた。
規格外のリンゴを初めて返礼品に加えたのは21年度。春の降霜で果面に傷がついたり、サビが出たりする規格外品の割合が大幅に増えた。
頭を悩ませたJAながのは、生産者や町と話し合い、「霜被害りんご」と名付けてふるさと納税の返礼品として出品することに。贈答用リンゴ以外では通常行わない光センサー選果で果肉の腐れがないことを確認し、糖度10度以上を選別した。
規格外品はそれまで家庭用として直売所で販売したり、1キロ150円~250円で市場出荷したりしていた。しかし、見た目は劣っていても味や品質は同じだとの自信から、「霜被害」は贈答品より同100円程安い最低300円に設定。「安いのにおいしい」と人気を集め、21年度の寄付は約2万件、1億3693万円が集まった。
22年度は糖度12度以上を厳選し、支援へのお礼の気持ちを込めて「感謝りんご」と名前を変えた。凍霜害が再び深刻だった23年度は、同センターで扱うリンゴの3分の1以上の580トンを「感謝」として出荷。集まった寄付は過去最多の9万883件、8億6525万円に上った。同年度のふるさと納税仲介サイト「楽天ふるさと納税」でリンゴとして最多の寄付を集めた。「発送など手間はかかるが、農家の所得向上につながった」と岡宮拓斗所長が強調した。
今年は霜被害は少なかったが、育成過程で傷がついた「サンふじ」など4品種を「感謝」としてふるさと納税に出品した。町内1ヘクタールで「秋映」などを栽培する小林繁美さん(68)は「ふるさと納税が規格外品の出口となり、お客さんに提供できるのはありがたい」と語り、こう続けた。「『感謝りんご』をきっかけに、飯綱の正規品も試してほしい」