Tシャツは、植物由来のレーヨンと脱脂粉乳由来のタンパク質を混ぜた半合成繊維50%、綿50%の割合で製造。1着当たり約160グラムの脱脂粉乳を使う計算で、生分解性で肌に優しい柔らかな質感が特徴だ。同ブランドの公式サイトなどで昨年11月から販売しており、今月8日時点で約250着の注文があった。4月の発送を予定する。
半袖か長袖、ポケットの有無で4タイプを用意。乳業大手・明治などの協賛もあり値引きをし、昨年12月10日以降の販売価格は最安の半袖ポケットなしタイプで5830円だ。
◇
鈴木さんは2017年にファームノートHDへ入社。好調から一転、生乳の需給緩和で生産者が抑制生産を余儀なくされるまでの酪農の情勢変化を見て、脱脂粉乳の過剰在庫に問題意識を持つようになった。こうした一次産業の課題解決を目指す会社を立ち上げようと、同社在職中の22年、「Blueprint one」を起業した。幅広く脱脂粉乳の活用策を探る中、牛乳に含まれるタンパク質を原料に繊維ができることを知り「脱脂粉乳でもできる」と考え、2年間かけ製造委託先を見つけて実現した。23年に独立し、活動を本格化させた。
「Tシャツをきっかけに、脱脂粉乳の在庫が問題化していると社会に知られ、商品開発の動きが他の企業に広がればいい」と鈴木さん。同ブランドにとどまらず、酪農ヘルパー管理組合に利用料無料の予約管理システムを提供するサービスも準備している。
(松村直明)
〈メモ〉脱脂粉乳は生乳からバターを製造する際に同時にでき、ヨーグルトなどの原料になる。新型コロナ禍で生乳の需給が緩和し、長期保存できる加工用の仕向け量が増える中、バターと比べ需要が少なく在庫が膨れ上がり、需給改善の課題ともなった。酪農家や乳業メーカーなどが資金を拠出し、在庫削減を進めている。