米農家に生まれ育ち、中学教師を定年退職した後、穴水町ボランティア連絡協議会長を務める滝井元之さん(79)と、在日韓国人3世の一級建築士で、非政府組織(NGO)「国境なき災害支援隊」代表のチョ・ホンリさん(71)。
滝井さんは2007年3月の能登半島地震で自宅が全壊。再建した家屋は昨年1月の地震でも無事だったが、教師退職後に不登校の生徒の学習支援をしていた隣接の2階建て農業倉庫が全壊した。
一方で滝井さんは、被災者を励まそうと、自ら町内の話題をA4判1枚にまとめた手書きの月刊新聞「紡ぐ」を創刊し、仮設住宅での見守りを兼ねた戸別訪問で配布を始めた。さりげない会話から困りごとを聞き出すうち、避難が長期化し、これからさらに多くのボランティアが必要になると痛感した。

その後、04年10月の新潟県中越地震、11年3月の東日本大震災、16年4月の熊本地震など、建築士が不足していた被災地で再建支援や危険度判定などの支援を続けた。今回の能登半島地震では、自宅の解体撤去の希望者が石川県の想定を大幅に超えた実態を知り、避難の長期化を予想。ボランティアのニーズが増えていくと考えた。
共通の知人を通じて2人が出会ったのは昨年2月。能登の宿泊施設が再開しても、宿泊費を負担しながらボランティアを続けるのは「持続不可能だ」と語り合った。解体予定だった延べ床面積約250メートルの倉庫をチョさんが調べ、「再建できる」と判断。ボランティアの生活拠点としてよみがえらせようと一致した。
改築後は男女別に6、7部屋を設け、長期間滞在できるよう自炊用のキッチンや風呂場、トイレを設置。滞在費は電気や水道代など最低限を想定している。最終工事に入った1月中旬、2人は入り口に「ボランティアセンター あした塾」と記した看板を掲げた。


(栗田慎一)