
午前11時、田やサトウキビ畑が広がる台湾中部の農業県・雲林県。全校生徒900人を抱える建国国民中学校にある厨房棟では、給食を前にサラダや五目汁の調理が進んでいた。

建国国民中は同校と近隣3校の計1200食を6人の給食調理員で作るため「6人でできるメニューを採用すること」が大前提。この日の五目汁にはダイコンやニンジン、豚肉、厚揚げ、シイタケ、ハクサイが使われていたが、普段は調理を間に合わせるため汁物の具材は1、2品である場合が多い。「日本は給食の食材の数が多い」と建国国民中の栄養士、楊秀芬(よう・しゅうふん)さんは驚く。
できあがった給食を詰めた保温容器には、温度計が付いていた。他校に給食を運ぶまでの間、温度が60度以上に保たれているか監視するためだ。台湾では温かい給食を子どもたちに届けるため、自校に厨房がなくても、他の学校の厨房から10分以内に届くように各地域に厨房が配置されている。

12月だがこの日の雲林県の最高気温は28度。正午過ぎ、日の丸や「くまモン」が描かれた大きな垂れ幕が壁を覆う多目的室に、半そで姿の2年生が集まってきた。

交流校の熊本県八代市立代陽小学校が建国国民中に提供した献立は、麦ごはん、八代特産のショウガにちなんだ「鶏のショウガソースかけ」、ダイコンの葉のふりかけ、ダイコンサラダ、旬の野菜を使った五目汁、牛乳、ミカン。ミカンを選んだのは八代市が世界一大きな果樹「晩白柚」(ばんぺいゆ)の産地として有名だから。建国国民中の実際の給食では台湾産の旬のポンカンが並んだ。

使う食材や料理の味付けも国によって異なる。台湾ではショウガソースは珍しく「ソースにはニンニクが使われることが多い」と2年の周巧羽(ジョウ・チャオユー)さん。「麦ごはんも、ダイコンの葉がおかずになるのも初めて」と目を丸くした。

一方、建国国民中が代陽小学校に提案した献立は、台湾の家庭料理サツマイモご飯、トウガンとひき肉のそぼろ煮、ハクサイの炒め物、サバヒー(ミルクフィッシュ)のスープ、パイナップル。トウガンは旬でないため、ダイコンで代用。台湾で食される代表的な魚・サバヒーは白身魚に置き換えた。

給食中、両校の子どもたちは、オンラインで交流。代陽小学校の児童は「サツマイモご飯がおいしかった」「台湾の料理はもっと辛いと思ったけど食べやすかった」などと感想を述べた。互いの代表的な料理や、人気のデザートについても尋ねた。

最後は画面を通して日台の子どもたちが一緒に記念撮影。給食を通して互いの国や地域の食文化に触れ、異国の味を楽しんだ。


