青森県は全国の6割のシェアを誇り、そのうちの大半が津軽産だ。津軽地方は昨年から大雪に見舞われ、雪が溶けないうちに寒波が長期間居座り、さらに次の寒波に見舞われた。弘前市では2月に観測史上最深の積雪となった。
県が2月下旬に36地点で調査したところ、3割以上が枝折れしていたり裂開していたりした木が15%程度あった。ただ、県は「大部分が雪に埋もれて木の先端部分しか分からないなど、正確な被害状況は不明」(リンゴ果樹課)とする。県は関係機関と3月半ばから被害調査する予定だったが、まだ園地には雪が積もったままで、1歩進むのも大変な状況のため延期した。農道の除雪ができず、たどり着けない園地も複数ある。
JA津軽みらいは「折れていない木はないほどの地域もある。全容は分からないが、これだけ広範囲で深刻な積雪被害は過去にない。花芽の調査は良好だったが、減収は確実だ。離農者は複数出てくるだろう」(営農課)と懸念。現在雪に埋もれている枝は、今後の雪溶けに伴い折れる可能性があり、さらに被害が拡大する恐れがある。
JA青森は「目視できる園地だけでも木の状態は非常に悪い。単年度の減収だけでなく、中長期的な影響が心配だ」(りんご販売課)とする。弘前市の卸売市場を経営する弘前中央青果は「積雪がひどく、枝折れが相当数になっている。どれだけ減収になるかは不明だが、当然、津軽のリンゴの出荷量が減ると全国の相場を左右する」(りんご部)とする。
青森県の津軽地方を襲った今冬の積雪。「リンゴ産地の危機」(JA津軽みらい)との声が上がり、離農者が相次ぐとの見方もある。まだ積雪が残る園地を歩くだけでも重労働だ。現場では春作業の遅れも懸念されている。
県内有数の産地・黒石市。見渡す限りの園地の木が枝折れし、幹すら折れた木が点在する。園地を一歩進むたび長靴が雪に沈み、数メートルの移動も一苦労だ。
「全部、バキバキ折れた。かわいそうで、もう木を見たくもないほど。最悪だ」。50アールを栽培する木村謙典さん(75)が悲しそうな顔を浮かべる。年末からの断続的な寒波でシーズン通して大雪に苦しんだ。通常は1月から剪定(せんてい)が始まる。豪雪に対応した剪定技術もあるが、雪の中の園地に入り、木にたどりつくまでに時間が掛かる。
多くの農家が重い融雪材の入ったバケツを持ち、雪の中を歩いて散布するが「想像以上に過酷」(JA)だ。そのため、散布の手助けとなる無人ヘリの予約が殺到している。しかし、台数に限りがあるため、大半が手作業を強いられている。
融雪材をまいたが園地にはまだ1メートル超の雪が残る。本来は木の全体バランスをみてするべき剪定だが、今年は雪から出た枝の部分だけを剪定し、補強作業もする。「通常は発芽前の3月末から作業する、ナシマルカイガラムシの防除ができる見通しがたたない。苗木も争奪戦で、本当に大変な状態だ」と嘆く。適期防除ができなければ、果実の品質や収量に大きな影響がある。
津軽地方のJAや行政などは豪雪対策本部を設置する。県内では2005年や12年、13年も記録的な積雪となったが、今冬はベテラン農家が「経験がない被害」と口々に言う。半世紀リンゴを栽培する弘前市の成田毅さん(71)は「これほどまでのリンゴへの雪害は過去にない」と話す。
(尾原浩子)