父の遺志受け継ぎ梨復活へ 福島県出身の若手農家奮闘 千葉県香取市・関本元樹さん
大熊町から約180キロ南に離れた香取市。80アールの畑に、元樹さんと祖父の好一さん(87)が、「秋麗」「あきづき」などの苗木計160本を植えた。近くには父・信行さんが植え、一時は手入れが滞った梨の木が見守るように立つ。
関本さん一家は、大熊町で100年以上続く梨農家。4代目の信行さんが手掛けた梨には毎年、全国から注文が入った。だが、原発事故で一変。一家は避難先を転々とし、離れ離れに暮らした。3ヘクタールの梨園は、全て除染で伐採された。
だが信行さんは、なじみの客から「梨をまた食べたい」との声を聞くと営農再開を決意。12年、大熊町に気候が近い香取市の農地を確保し、苗木を植えて一家で移住し、再起を目指した。ところが17年、信行さんが55歳で急死。大黒柱を失った一家は一度、梨栽培を断念した。
元樹さんにとって梨園は、子どもの頃の遊び場であり、父親の仕事ぶりに触れる場所だった。父の後を継ぐことを視野に、経営が学べる京都市の大学に進学。新型コロナウイルス禍でオンライン講義が増えると香取市に帰り、好一さんが手掛けるキウイフルーツの栽培を手伝いながら果樹栽培の基礎を学び始めた。
好一さんは「元樹と木を世話していると今までの悲しみも忘れる」と就農を喜ぶ。
元樹さんは「大熊を離れた人が故郷を思い出し、おいしさでも選ばれる梨を作りたい」と誓う。
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