昨年4月にスタートした随時連載「給食百景」は8月、50回を迎えた。子どもの成長に欠かせない一食が、どんな思いで作られ、子どもたちに届いているのか。地域や農業の活性化とどんな関わりがあるのか。全国の学校給食と産地、それにまつわる多彩な人模様を伝えてきたこれまでを地図と写真で振り返る。
給食百景はこれまで52回掲載し、39都道府県を紹介してきた。
学校給食を軸にまちづくりを進める千葉県いすみ市は2015年、小中全14校に市産の有機米を導入。子どもたちが家庭で話し、親は市産米を買うようになった。
リンゴ産地の青森県鶴田町は06年から「りんご一籠運動」を始め、町の若手農家グループや農家の子どもたちが給食のためにリンゴを持ち寄っている。
1月の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市では5月、4カ月ぶりに給食が再開。地震で校舎が壊れた六つの小学校が市立輪島中に間借りし、束の間の大所帯となった校舎でカレーライスを味わった。
大山の裾野に広がる鳥取県大山町では、イノシシによる作物の被害が深刻化。地元の猟師らでつくる振興会が仕留めたイノシシ肉を給食に活用している。
地場産農産物をふんだんに使ったり、地元の特産品をできるだけ用いたり、学校単位で調理したり、まとめて作ったり、弁当と給食を選べたり、子どものリクエストで献立が決まったり――。学校給食は地域の個性を映し出す“鏡”だ。
ご飯にスープをかけて食べる朝鮮料理「クッパ」。鶏肉でだしを取り、野菜を入れて、ひと煮立ちしたらスープの完成。北海道朝鮮初中高級学校の給食には週に1、2回、ビビンバやナムルなど本場流の民族料理が出る。
鶴田町で2006年から続く「りんご一籠運動」で、町内の若手農家グループや農家の子どもらが給食に提供したリンゴ。毎年秋から春までの毎日、皮付きリンゴを給食に出す。
遠野市の学校給食センターで作られている高齢者向けの宅配弁当。少子高齢化を背景に、センターに高齢者への配食サービスにも対応できる調理室も作った。学校給食以外の食事も作る給食センターは全国でも珍しい。
栃木県唯一の農業専科高校、県立栃木農業高校が育てた和牛のサイコロステーキを食べる中学生。栃木農業高校は栃木市の全小中42校に給食用の食材を供給。野菜を含む同校産食材の使用率は最大で7割にもなる。
「箸の持ち方・使い方」を給食時間の前に学ぶ児童。自動車関連産業が集積する豊田市の児童・生徒の5%は外国籍。栄養教諭らが講師を務め、日本人も含めた全ての児童に箸の使い方を楽しく教えた。
琵琶湖にだけ生息する体長10~15センチのホンモロコの唐揚げが守山市の給食に出た。琵琶湖は50年前、排水で汚染され多くの固有種が姿を消したが、下水道の普及と排水対策で透明度を回復。ホンモロコも戻った。
大山町で捕獲したイノシシ肉を使ったドライカレー。外食需要がなくなった新型コロナ下の2020年、大山ジビエ振興会が町の学校給食用にイノシシ肉を無償提供し、子どもたちに人気となった。
山口県のソウルフード「チキンチキンごぼう」。鶏肉とゴボウを揚げ、甘辛いたれとエダマメであえる。30年前に山口市の学校給食で生まれ、家庭の食卓に並ぶ定番の味になった。
子ども1人で弁当の調理から片付けまで行う「弁当の日」に児童が作った力作。子どもの自立を促すため2001年に綾川町立滝宮小学校で始まり、全国2400校に広がった。
同県のブランドイチゴ「博多あまおう」を食べる児童。JA柳川が10年前から毎年3月に給食に提供している。「博多あまおう」有数の産地である柳川市の子どもたちは、イチゴを「あまおう」と呼ぶ。
沖縄県最北の伊平屋島は「琉球の原風景」が残る。手つかずの海岸やサンゴが砕けた白砂など太古の自然環境が守られてきた。村の学校給食も島の食材が使われ、栽培が盛んなサトウキビも子どもが収穫を体験をする。
(「給食百景」取材班)