日本の食と農は、ご当地ヒーローに守られている……!。農作物をむしばむ病気や害虫、健康を脅かすウイルス、日常生活を壊す自然災害。農家を悩ますヒール(悪役)とイベントで戦い、地元農産物のPRもする“農業ヒーロー”が各地で活躍している。
アグリファイター・ノースドラゴン(北海道)
打倒”イモチ”キング
刈り取った稲を掲げるノースドラゴン(JAきたそらち提供)
減農薬栽培米「ひまわりライス」を生産する北海道北竜町の太陽、水、土がモチーフの3人。JAきたそらち北竜支所などが13年に企画した。米を食べて「ライスチャージ」。稲を枯らす「イモチキング」を打ち倒せ!。
防災戦隊ボウサイザー(福島)
”防災ダンス”で意識向上
ダンスで防災の大切さを教えるボウサイザー(JA共済連福島提供)
不意にやって来る災害~地震の時は、さぁ、火を止めろ♪。保育園や気象台で曲に合わせて「防災ダンス」を踊り、防災意識を高める。
JA共済連福島が企画、17年から活動。3人と災害魔人「ギャオン」の戦闘も大人気だ。
未来Farmerネッキーマン(茨城)
病害からネギ産地守れ
ネギ畑を歩くネッキーマン(JA岩井提供)
2XXX年。夏ネギ産地の茨城県坂東市は、深刻な後継者不足に陥った――。そんな時に現れた、未来形アンドロイド農業者。JA岩井などが13年に作成した。黒腐菌核病をもたらす悪役からネギを守っている。
茶神888(静岡)
飲もうぜ、お茶!
茶畑でほうじ茶を飲み、ホッと一息つく茶神888(静岡県富士市で)
日本茶をこよなく愛し、各地の茶畑を駆け抜けては「飲もうぜ、お茶!」のキャッチフレーズを発信する。静岡県生まれのヒーロー「茶神888(ハチジュウハチヤー)」。立春から88日目で、茶摘み最盛期の「八十八夜」が名前の由来だ。
11月下旬、日本晴れの日。左肩から胸にかけて「一芯二葉」をあしらった装備が輝いていた。888は茶の栄養を力に風邪の化身「インフル」と戦うが、この日は小休止。同県富士市でほうじ茶の製造を手がける企業「日本茶茶茶」の山田典彦代表の茶畑に訪れた。
888は2009年に活動を開始。県外にも飛び出し、茶畑の景観を交流サイト(SNS)で発信したり、茶生産者とタッグを組んで商品開発をしたりしている。同社とは香り高さが特徴の100%茎ほうじ茶を作った。
富士山を眺めて、ほうじ茶をすする山田代表は「ほうじ茶で世界一を取る」。888は「全人類にお茶を届ける」。互いに“茶レンジ”を誓った。
ため池マン(兵庫)
在来種守る
憧れのため池マンになりきった子どもたちと本人(メダカのコタロー劇団提供)
「ひょうごのため池はぼくたちが守る!」が合言葉。兵庫は日本一のため池数を誇る。外来生物「ガニオン」をやっつけようと、「メダカのコタロー劇団」が10年前に製作した。児童も変身し、環境を守る大切さを学ぶ。
白兎跳神☆イナバスター(鳥取)
食のみやこ守る
鳥取県産イチゴを食べ、パワーアップするイナバスター(イナバスタープロジェクト提供)
出雲神話「因幡の白兎」をモチーフに、09年誕生。県産イチゴや米を食べて「スーパーうさぎパンチ」で勝負を決める。世界中の美食の独占をたくらむ組織「ハングリアン帝国」から食のみやこ・鳥取を守れ!
マツヤマン(愛媛)
ミカンの天敵・青かび倒す
イベント会場に現れたマツヤマン。「ミカンアーマー」を装備している(本人提供)
愛媛の伝説のミカンを加工して作られたよろい「ミカンアーマー」をまとい、ミカンの天敵・青かびをモチーフにした悪役と戦う。14年に松山市で誕生。デートを疑似体験できる動画をユーチューブで配信中だ。
食育戦隊コメンジャー(福岡)
「カメムシ一味」許さない
「応援ありがとう!」。カメムシ一味を倒した後、決めポーズをとるコメンジャー(福岡県糸島市で)
「はーはっはっはっは。われわれは、カメムシ!」。2024年12月、福岡県のJA糸島青年部が開いた農産物直売イベント「ちかっぱ糸島」の会場は、緑の甲羅を背負った一団に襲われた。農家が育てた米や野菜を食い荒らす「カメムシ一味」だ。
子どもたちが憧れのヒーローの名を叫ぶ。「コメンジャー!」。五色のヒーローが刀や農薬を仕込んだバズーカ砲で攻撃すると、一味は「覚えてろよ~」と逃げ去った。「ご飯を食べて元気に過ごしてくれよな!」。5人が歓声に応えた。
食育戦隊コメンジャーは、同青年部が18年に企画した。約60人の若手農家が、糸島で作っている米をモチーフにしたヒノヒカリ(赤)、ヤマダニシキ(黄)、ニコマル(緑)、ミルキークイーン(桃)、ユメツクシ(青)に変身。保育園などで楽しく食と農の大切さを伝えている。
ユメツクシが新年を迎える読者にコメントを寄せた。「人の夢は?終わらんばい?」
(佐野太一)