JA紀州×とくし丸
暮らし守る移動スーパー
紀伊半島の山あいを進み、家を次々と訪れる軽トラック。和歌山県のJA紀州が走らせる移動販売車だ。中山間地域が広がり、買い物が不便な地域住民を支えるため、食料品や日用品などの生活必需品を届ける。連携するのが、移動スーパー事業を手がけるとくし丸(徳島市)。民間企業と連携し、組合員・地域住民の暮らしを守るJAの姿がある。「近くのスーパーまで車で40分もかかる。移動スーパーが来てくれてありがたい」。訪れた移動販売車で買い物する地域住民からは、こうした声が相次ぐ。
JAが走らせる移動販売車「とくし丸」は、同社が設計する移動販売車を購入して運営する。同社は、販売手法や事例などの情報をJAに提供し、運営を支える。

移動販売を希望する住民の家1戸1戸を訪問し、軒先で食品などを販売する。近隣の住民も買いに来る場合もある。1台で1日当たり約30戸を訪問し、平均10万円程度を売り上げることで、経営の持続可能性を支える。
JAによると、移動販売車を利用する地域住民によっては、スーパーまで約45キロある。高齢になるほど買い物に行くのが難しくなり、移動販売車のニーズは今後も継続すると見込む。
購買部の谷清孝さんは、高齢者や体調に不安を抱える利用者も多いことから「買い物の不便解消だけではなく、地域住民の見守り活動も大切な役割だ」と話す。

山形・庄内地域
生消連携で持続可能な産地めざす

生活クラブは2017年、同地域の提携生産者と「庄内協議会」を立ち上げた。JA庄内みどりや、JA庄内たがわ子会社の羽黒・のうきょう食品加工(山形県鶴岡市)などが参加。生活クラブが組合員に庄内への移住や農作業の希望を募り、提携生産者が仕事を紹介する。
地元ブランド柿「庄内柿」を2・5ヘクタールで栽培する、JA庄内みどり庄内柿部会遊佐支部の松本揮一支部長は、柿の摘蕾(てきらい)や収穫などで毎年、生活クラブの組合員を受け入れる。「作業日数も体の負担も大幅に減り、非常に助かる」と語る。
羽黒・のうきょう食品加工は昨年12月、最盛期を迎えた赤かぶ漬けの原料のへたを切り落とす作業で、生活クラブの組合員4人を受け入れた。同社のほぼ1日の作業量に当たる約60キロを4人が2時間で処理。同社の斎藤良浩生産販売部長は「機械化できない作業を手伝ってもらい、社員は別の仕事を進められた」と振り返る。

協同組合連携組織 会員数は過去最高
日本協同組合連携機構(JCA)の調査によると、2023年度の各都道府県の協同組合連携組織に加入する会員の数は、合わせて484団体だった。JCAが調査を始めた17年度以降で、過去最多となった。23年度は、21年度の前回調査時より9団体増えた。労働者協同組合などに加え、国連児童基金(ユニセフ)協会、サッカー協会などが加わった。大学や新聞社などが会員になっている連携組織もあり、協同組合を中心に、多様な組織や企業に連携の輪が広がっている。
会員同士が連携して開くイベントなども増え、前回調査時より43件多い220件だった。協同組合フェスタなどのイベントの他、学習会や環境保護活動、テレビ番組の制作など、連携事例も多様だ。
