卸売会社やスーパー、百貨店、果実専門店、生協、外食など51社から回答を得た。
流通事業者が23年に注目する果実(品種・ブランド)の1位「シャインマスカット」は、国内販売に加え、円安を追い風にした輸出の好調も支持を確固たるものにした。生産量が大きく増えても単価が安定している点が強み。今回は他のブドウ品種との順位差が大きくなった印象だ。

2位は昨年に続き、愛媛県のかんきつ「紅まどんな」(品種・愛媛果試第28号)。出回りが歳暮時期と重なることで知名度が全国区となり、人気に火が付いた。今や同品種の6割が県外流通しており、全国から票を集めた。
3位には、種まで食べられるスイカ「ピノ・ガール」が入った。20年の発売以降、産地化が始まり、簡便ニーズを捉えた動きに期待。スイカでは黄肉・高糖度の「金色羅皇(こんじきらおう)」を推す声もあった。

4位タイは、山形県のサクランボ「紅秀峰」だった。6月下旬からの出回りで中元需要を取り込め、棚持ちが良く輸出に向く点で評価を集めた。今年、本格デビューする同県産サクランボ「やまがた紅王」も大粒と良食味への期待からランクインした。
栃木県の新品種のイチゴ「とちあいか」は、高収量で果肉がしっかりしており、良食味のため輸出も有望だ。同県が5年で県内生産の8割を同品種にする方針で、供給力にも期待が高まった。

蜜入り黄色系リンゴ「ぐんま名月」はアジアでニーズが高く、生産量は10年で5倍に増加。蜜入りリンゴは近年のトレンドで、「高徳・こみつ」「はるか・冬恋」などもランクインした。柿では「太秋」や「秋王」が急上昇。完全甘柿の将来的なブームの予感。硬めの歯応えが特徴の大玉品種「さくら白桃」も順位を上げた。
規格外品も期待
23年の国産果実の販売で期待される場面は、「円安により好調な輸出」と「規格外などエシカルを打ち出した値頃感」がトップ(48%)で並んだ(複数回答)。イチゴやブドウなどの輸出が加速する見方が強い。

一方、環境問題への関心の高まりや節約志向もあり、「消費者は外観不良でも良食味で、安価な果実を求めている」(小売り)として、規格外商品の定番化を望む声も少なくなかった。
■記者の目■
果実は高齢化や担い手不足による生産減少傾向に伴って、高単価化が進んでいる。良食味品種の登場、円安を追い風にした好調な輸出、資材高も相まって、高級路線は今後、拍車がかかるだろう。
一方で物価上昇により、国内の果実販売は勢いを失っている見方もある。日常使いの値頃な果実や、業務・加工ニーズへの対応は手薄とされる。産地の戦略は多角化が求められている。(高梨森香)