今年の食肉販売のキーワードや販売動向の予測について、食肉卸や小売りのバイヤーら36人から回答を得た。
23年の国産食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)の販売で最も注目するキーワードは、新設した「冷凍タイプの品ぞろえの強化」と、年々順位を上げる「環境や社会への配慮(エシカル消費)」が得票率17%で同率トップとなった。
「冷凍タイプの品ぞろえの強化」は、調理疲れによる簡便志向の高まりや、外食気分が味わえる本格的な商品の登場で“冷食ブーム”が巻き起こる中、スーパーや百貨店といった小売りを中心に票を集めた。タイムパフォーマンス(費やした時間に対する効果)を重視する風潮も冷食人気を押し上げる。
昨年の調査で急浮上した「環境配慮」は、食肉メーカーや百貨店が重視する傾向だ。家畜由来の温室効果ガスの抑制といった世界的な関心の高まりが背景にあるとみられる。

付加価値が首位
注目する販売キーワードの選択理由では、「価格競争に陥らないための付加価値提案」が31%と、2位に9ポイント差を付けてトップとなった。あらゆるコストが高騰し、低価格による訴求が難しくなる中、販売現場では付加価値提案にかじを切る動きが加速しそうだ。
和牛の販売キーワード(複数回答)では、「訪日外国人(インバウンド)需要の回復」が47%、「円安を追い風とした輸出需要の高まり」が42%で1、2位となり、海外需要回復への期待が目立った。また、「赤身ニーズの高まりに対応したモモなどの扱い強化」や、近年注目が集まる「脂肪の質」もそれぞれ約30%の支持を得た。
国産の内需は増

23年の販売動向予測では、国産は全畜種で「増える」が「減る」を上回った一方、輸入品は牛肉、豚肉で「減る」との回答が4割を占めた。節約志向で需要が高まる国産鶏肉は「増える」が61%となり、販売を大きく伸ばす見込み。
価格転嫁前向き
価格転嫁の考え方を尋ねた項目では、「値上げしても消費者に選ばれる商品提案をしていくべきだ」が最多の39%。回答者の半数をスーパーと百貨店が占め、魅力的な商品提案があれば値上げに前向きな姿勢が見て取れた。
■記者の目■
物価高のあおりを強く受ける食肉の販売現場では、価格競争に陥らないための新たな価値が求められている。小売りが扱いを強化する冷凍タイプの商品は、高級感や特別感といった付加価値を出しやすい国産に商機がある。新型コロナウイルス下で伸びたネット通販事業で、冷凍品のノウハウを持つ産地は多い。積極的な提案で販路を広げたい。(斯波希)