日本農業新聞は4月1日、国内最大級の市況情報サイト「netアグリ市況」を大幅にリニューアルした。スマートフォン対応のデザインになり、青果や花きを中心に生産者の経営作物などを「お気に入り登録」すれば、最新の市況がトップページに表示される。「欲しい情報をいち早く、より手軽に見られる」内容へと進化した。
【目次】
●リニューアルのポイント
●私はこう使う!
ご利用には日本農業新聞公式ウェブサイトで新たに会員登録が必要です。電子版購読者は登録作業が不要。会員登録ページはこちら。問い合わせは市況グループ、メールアドレスはnopix@agrinews.co.jp リニューアル直後は問い合わせが集中し、回答に時間を要する場合があります。
青果・花き300品目網羅 新たに会員登録を
異常気象や新型コロナウイルス禍などで農畜産物の需給・価格は目まぐるしく変わる。資材価格などあらゆるコストが高止まりする中、生産者や流通業者が確実に収益を得るには、市況情報を読み解くことが一層重要となる。
1928年創刊の「市況通報」から始まった本紙は、2010年から読者向け無料サービス「netアグリ市況」を提供する。今回、農業者の視点に立った情報発信強化に向け、サイトの大幅刷新に至った。
見直しの目玉は、スマートフォンやタブレットに対応したデザイン変更だ。農作業の合間や出先でも、最新の市況を閲覧できる。トップページはカスタマイズ可能で、生産・販売する作物など、見たい品目・市場の市況情報を「お気に入り登録」すれば、簡単につながる。品目の検索機能も強化し、「ミニトマト」や「シャインマスカット」などキーワード入力ですぐに探し出すことができる。「絞り込み」機能では、好みに応じて期間・市場を指定してチェックしてみよう。
青果物・花きの各7の大手卸の取引データを基に品目別に算出する本紙独自の「日農平均価格」は、各地域の建値の相場指標を示すものだ。取り扱う青果物や花きは約300品目に上る。午前中から取引結果を更新、午後5時までに確定する。
農水省調査と本紙独自に収集するデータを合わせた「市況速報・確定」では、野菜や果実、花き、畜産物(牛肉・子牛・豚肉・鶏肉・鶏卵など)を扱う全国約70市場での取引結果も確認できる。
従来のパソコン版で支持されていた、「日農平均の品目一覧」も引き続き用意する。紙面だけに掲載していた「主要品目(卸一覧)」ページも新たに搭載した。長年蓄積する取引データを基にはじき出す「動向ランキング」「個別・年次動向推移」など、見どころが多い。パソコンからのアクセスも引き続き可能となる。
会員登録数は、3月22日時点で8000人を超える。今後、紙面でサイトの使い方のQ&A企画を展開する。
経営把握客観的に 長期傾向分析も
■ミニトマト栽培・畑裕樹さん(群馬県伊勢崎市)
netアグリ市況が始まった当初から毎日活用している。栽培するミニトマトと、市況が関連するトマトについて1日2回見る。昼過ぎに集計中の速報で取引量や価格の動きを把握。7卸がそろう午後4時半ごろに取引量の棒グラフで増減を確かめる。例えば自園の増量が、全国的な傾向と一致しただけか、工夫の成果なのか客観視できる。<下に続く>
日曜日は、週や年間など長期の取扱量や価格の傾向を見る。日曜日付紙面で掲載する「野菜見通し」でトマトの増減や市況、他産地の動向を参考にして、自分の経営の振り返りと生育予想をして作業予定を組む。
アグリ市況は過去10年など長期傾向を分析できるのが良い。経営計画を立てるのに重宝する。出荷量や価格の安定を最優先に経営の計画を立てている。長期多段取り作型を主体に、従来は6月定植で8月の高値を狙う抑制作型を組み合わせていたが、暑さで収量が上がらないリスクが高かった。今年は3月定植で5、6月収穫の半促成作型と、8月定植の組み合わせに挑む。アグリ市況で、この10年ほど5、6月は価格が低いが安定しているからだ。単価と量から逆算して、低コスト生産で利益を上げる。
主要品目ではないミニトマトは、グラフを見るまで何度もクリックが必要だった。刷新後はお気に入り登録でトップ画面に表示したい。出先や作業の合間にスマホで見るのも楽になりそうだ。 ≫ 畑さんのマイページ
生産者に動向説明
■JAみい・小野義憲専務(福岡県)
福岡県のJAみいは小松菜や水菜を筆頭に、県内有数の野菜生産を誇る。生産者に販売動向を伝える上で、客観性を持つ情報の収集は重要。主要市場の大阪を中心に、主要品目の市況を毎日チェックしている。
夏は毎年のように豪雨に見舞われ、おととしは小松菜が2カ月も出荷できなかった。netアグリ市況で大阪市場の毎日の相場を拾ってグラフ化し、この間の相場推移を分析。被災に伴う品薄高、出荷回復に伴う収束など、影響を可視化できた。
管内の主要品目や出荷市場、競合産地の同一品目などをピンポイントで検索できれば、使い勝手は格段に良くなると期待している。
「お気に入り登録」したい情報
- 大阪市場の小松菜の年ごとの相場推移
- 大阪市場の水菜の年ごとの相場推移
直売所の値決めに
■シンセニアン・勝本吉伸社長(直売コンサル会社)
netアグリ市況は直売所の値決めの基準になる。各地の直売所でアドバイスする際には、日農平均価格の1.5倍を売価の目安にしようと伝えてきた。例えば、キャベツの日農平均価格が1キロ77円なら、キャベツ1個が1.2キロとすると、売価は1個当たり138円と、ちょうどよい価格帯になる。安過ぎる値付けをする出荷者にはこの目安を示して安売り競争を防ぎ、高品質なら少しでも高く売ってほしい。日本農業新聞の紙面に常時載るのは主要品目に限られるが、スマホにも対応するネット版では、季節品目も見られて便利だ。
「お気に入り登録」したい情報
- 春はタマネギとソラマメの単品グラフ
- 夏秋はカボチャとサツマイモの単品グラフ
現場意識変わった
■テラスマイル・生駒祐一代表(農業経営管理システム会社)
2011年から日本農業新聞のnetアグリ市況を活用してきた。市況を筆頭に、他産地の出荷傾向・出荷品種・出荷規格を分析した情報は、若手農業者に向けた勉強会でも関心を集める。栽培技術が主体だった生産現場も、市況情報が〝見える化〟されたことで「第〇週に収穫のピークを持ってくる」「今年はSサイズを主力に出荷し、収穫サイクルを変える」さん識が変わった。今後、フードサプラチェーンでデジタル化が急速に進む。経営への嗅覚を高めるために、市況の分析は重要な情報となる。
「お気に入り登録」したい情報
- ネギとソラマメの単品
- 東京市場の野菜入荷量
- 平年比の値上がりや値下がりランキング
コロナ禍で一層重宝
■農家・豊嶋和人さん(香川県まんのう町)
netアグリ市況は約10年間、毎日利用している。ブロッコリーは全国的な傾向を知るため、大手7卸のデータを集計した日農平均価格を見る。
例えば、他産地で大雨が降った時の数量や価格の相関などが分かり、参考になる。新型コロナウイルス禍以降、切り花の相場変動が大きくなり、利用頻度が増えた。
地元スーパーのインショップや直売所に出す商品の価格を決める上で、地元市場の動向を参考にする。新装版では高松市場をお気に入り登録し、頻繁に確認したい。
「お気に入り登録」したい情報
- 主要な野菜品目の平年比価格
- ブロッコリーの日農平均価格(大手7卸)
- スイートコーンの高松市場の相場
産地からの物流費を含めて市況は動いている。netアグリ市況を見ると、自分が育てている作物がどれだけ必要とされているかデータで読み込むことができる。各地区大手卸の市況の影響は、地方市場に及ぶ。生産者が地方市場に出荷して安過ぎると感じたら、なぜ評価されないのか分析してほしい。例えば、ガーベラは若者に人気が高く、地方市場で売れないとすれば、客層に高齢者が多いからかもしれない。
生きたデータで変化見極めて
大田花き・磯村信夫社長
長期分析がいつでもできる利点は大きい。行政などの年間統計は発表まで時間がかかるが、netアグリ市況ならすぐに過去をさかのぼって分析でき、目前の作付けに生かせる。
スマートフォン対応で、その日の相場の動きが見やすくなる。高値が続けばいつかは下がる、そんな潮目の変化を見極めるのが大切だ。冬は主産地のある福岡から、夏は逆に北海道の市場から順に量や価格の動きを読む。産地に近い市場で増量して価格が下がれば、大阪や東京への出荷が増えるだろう、といった予想ができる。
生産者やJAの分荷担当者も、価格や取引量を見て、需要があるのか、量がよほど少ないのか、などと分析し、作付けや出荷先の計画に生かしてほしい。生きたデータは貴重で、使い方は無限大だ。
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