調査は米卸や米穀店、スーパー、百貨店など74社の回答を得た。
24年の米の消費者ニーズについて聞いたところ、「値頃感」では64%が「強まる」と答えた。全面的な物価高で節約志向が長引くとの見方が多い。「健康や栄養価」も注目度が高く、50%が「強まる」と回答した。減農薬栽培などの取り組みが進む「環境配慮」は47%、「物語性」は35%が「強まる」とした。
「値頃感」に対するニーズを受けて、ブレンド米への期待が高まっている。24年に高い需要が見込めそうな商品について聞いたところ、ブレンド米(27票)が3位に食い込んだ。家庭用では低価格帯商品の売れ行きが堅調で、「銘柄ではなく価格で選ぶ消費者が増えている」(米卸)と明かす。多収性品種の調達強化を目指す声があった他、お得感のある大容量商品(15票)を推す声も多くあった。
物語、小容量に商機

他方で、物語性などの「こだわり」に商機を見る業者も多い。販売時に訴求したい付加価値について聞いたところ、「生産過程の物語性」が38%と強い関心を集めた。「食味などでの差別化が難しくなる中、消費者の興味を引く独自性が重要」との指摘もある。専門小売りなどが高級感を打ち出した「オリジナルブランド」も34%と高かった。
高い需要が見込める商品では、簡便ニーズを捉えたパックご飯(35票)が不動の1位。ただ、300グラム~2キロ程度の小容量精米商品(33票)が2位となるなど、「こだわり」が見える商品が続き、高級おにぎり(21票)が4位、希少米・極良食味米(20票)が5位となった。栄養価が高く、健康イメージのある玄米・雑穀商品(18票)も人気を集めた。

期待する銘柄では、「つや姫」(31票)が最多。知名度や食味の高さが評価され、「ゆめぴりか」(23票)、「新之助」(20票)が続いた。多収性品種の「にじのきらめき」(12票)、「つきあかり」(9票)も底堅い人気を誇った。
定番の銘柄も意地を見せた。23年産で高温障害が多発したものの、「コシヒカリ」(17票)が4位と健闘。60周年の“還暦”を迎えた「ササニシキ」(10票)が7位となった。
<記者の目>
米の販売は、多様化するニーズに照準を合わせた戦略が重要だ。高単価販売が期待できる分野では「こだわり」の演出が鍵となり、物語性や希少性など独自色の訴求が欠かせない。栄養価などプラスアルファの価値提案も有効だ。一方、底堅い需要が見込まれるのが「値頃」な商品だ。ブレンド米の販売に向けて、多収性品種を求める声も多い。ただ、安定供給への要望は根強く、産地には高温耐性品種の導入など対応が求められる。(鈴木雄太)