
国産食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)の販売で最も注目するキーワードは、新設した「物価高による食肉消費減への対応」(33%)がトップとなった。節約志向の強まりで高価格帯の牛肉を中心に市場が縮小しており、卸や実需も危機感を強める。
「値頃感のある商品・メニューの強化」(13%)が2位に入るなど、付加価値よりも価格を重視する傾向が強まり、前年首位だった「環境や社会への配慮」(11%)は3位に後退した。
販売回復に向けた対応策(複数回答)では、「メリハリ需要に対応した高級銘柄の訴求」(49%)に支持が集まった。「平日は安価な食肉、年末年始や大型連休は和牛といった高価格帯の食肉が売れる傾向が顕著になっている」(大手スーパー)との声が多い。
小売りや外食を中心に、「肉を使うメニュー提案の強化」(40%)も票を集めた。比較的安価な切り落とし肉を使ったメニューや、手軽なレンジ調理レシピなど、日常の食卓への登場機会を増やしていくことも消費の底上げにつながりそうだ。
海外需要回復に期待

和牛販売のキーワード(複数回答)では、前年に続き、「インバウンド(訪日外国人)需要の回復」(44%)、「円安を追い風とした輸出需要の高まり」(36%)への期待が高かった。新型コロナウイルスの影響が緩和し、「飲食店やホテルなど業務需要の回復」(33%)は前年から11ポイント伸長した。
「節約志向の強まりに対応した低価格部位や切り落としなどの提案」(31%)も前年から12ポイント増えた。
小売りを中心に、値頃感を演出できる和牛商材の扱いを強化する動きが出そうだ。「赤身ニーズに対応したモモなどの扱い強化」(31%)も関心が高かった。
場面ごとの消費動向予測では、内食、外食ともに鶏肉の伸びが際立った。牛肉は、内食での苦戦が続く一方、観光やインバウンド需要の高まりで、外食向けが「増える」とした人の割合が53%に上った。
<記者の目>
「物価高=低価格人気」という構図は、食肉の販売では必ずしも当てはまらない。「今回の物価高では、宝飾品よりも食べ物でたまのぜいたくを楽しむ人が多い」(小売り大手)との声もあり、高級商材として、和牛や銘柄肉を訴求する実需は増えている。生産コスト上昇分の価格転嫁に向けても、ハレの日向けの高級感演出、日常向けのメニュー提案といったメリハリを意識した販売で、消費の底上げを図りたい。(斯波希)