トマトジュースが、2024年の上半期に売れた商品としてトレンド入りするほど人気だ。その裏で、原材料の調達環境は厳しい。国産は年々生産が減り、大半を占める輸入品も価格高騰が著しい。飲料メーカーは、収穫機の貸与など生産者の負担を減らすサポートに注力し、国産の調達を強化する。
輸入品高止まり
加工用トマトはリコピン含量が多く、濃い赤色が特徴。露地の無支柱栽培で、生食用と比べて栽培の手間や費用は少ないとされる。ただ、真夏の収穫は手作業だと負担が大きく、生産は年々減少。農水省によると、23年の作付面積は479ヘクタール、出荷量は2万6000トン。20年間でそれぞれ33%、46%減った。
国内生産が縮小し、トマトジュースの原材料は大半を輸入品が占める。しかし近年、輸入品の調達コストは急増。財務省の貿易統計によると、原材料となるトマトピューレ・ペーストの23年輸入価格は1キロ263円。前年比で58%高、5年前からは2・2倍と急騰した。
輸入情勢について、全国トマト工業会の小後摩美絵専務は「ウクライナ危機後、あらゆる農作物の供給バランスが崩れ、円安も重なった。さらにトマトは過去2年、欧米産が干ばつで作柄が悪化し、『トマトショック』と呼ばれる需給逼迫(ひっぱく)が起こった」と説明。今年は逼迫感は和らいでいるが、「当面高止まりが続く」(同)。
収穫機貸し支援
そこで期待されるのが、国産供給の充実だ。カゴメは毎年、夏に数量限定で国産トマト100%の「カゴメトマトジュースプレミアム 食塩無添加」を販売。今年、発売10周年を迎えた。優しく搾って雑味を抑え、熱をなるべくかけずに素早くパックに詰め、生のトマトの味に近づけたストレートジュースを売りにする。
国産は全量、生産者との契約取引で調達。収穫機の貸与など収穫の労力や設備投資の負担を減らすサポートに取り組む。
栃木県さくら市の江面守さん(66)は、21年から加工用トマトの生産を始めた。米と大麦が中心で園芸品目の栽培経験はなかったが、「米価が厳しくなり、転作品目を探していた。契約で価格が決まっているので収入のめどを立てやすく、収穫機を無償で借りられたのも大きい」と、挑戦した経緯を話す。
初年は1ヘクタールで始め、24年は1・5ヘクタールに広げた。水田転作のため、排水対策が課題。連作障害を避けるため毎年農地を変えるが、好条件の農地確保が難しく、当初は10アール収量が3トン台と伸び悩んだ。しかし今年は作柄にも恵まれ、5・1トンを確保。「堆肥を入れて土壌改良を進め、何とか6トンに乗せたい」と意気込む。
(橋本陽平)