クラフトサケは、クラフトサケブリュワリー協会が定義する、米を主原料とするなどの日本酒の製造方法を土台にした新たなアルコール飲料。酒税法上は「その他の醸造酒」に該当する。日本酒とは異なり、果実やハーブといった副原料を使用できる点が特徴だ。
日本酒らしい深い味わいに加えて、果実など副原料の酸味や香りが楽しめるとして人気を呼ぶ。10月に横浜市内の商業施設で開いた試飲イベントには、トマトとバジルを使ったマルゲリータ風味のものなど多様な33種類のクラフトサケが集結し、集客数も前年を上回るなど盛況だった。
クラフトサケづくりの先駆けとなるのが、秋田県男鹿市の醸造会社「稲とアガベ」だ。日本酒の酒蔵で修行を積んだ岡住修兵代表が21年に設立した会社で、果実や茶、スパイスやコーヒーを使った商品を展開している。全国の酒類販売店や飲食店に販路を広げており、「需要に供給が追い付かない状況」(岡住代表)と明かす。
同社が使う原料米は全量が秋田県産。自社田も約90ヘクタール手がけており、「亀の尾」などを作付けしている。岡住代表は、「商品を通じて地域の特色を伝えられる点もクラフトサケの魅力」と話す。
岩手県紫波町の「平六醸造」は、今年からクラフトサケの製造に乗り出した。同社は、国指定重要文化財「日詰平井邸(平井家住宅)」に残る日本酒の仕込み蔵を、平井佑樹代表が醸造所として復活させた会社で、地域の活性化につながる期待がある。
同町の特産であるもち米の発芽玄米を使った「リバイブ」(720ミリリットル、1980円~)や、地元産のリンゴやブドウを加えた「レイヤー」(同2200円)などを展開している。平井代表は、「カボチャやサツマイモといった地元の野菜も使ってみたい」とし、地域の魅力発信にもつなげたい姿勢だ。
クラフトサケの醸造業者は今後、若手醸造家を中心にさらに増加する見込み。24年現在の同協会の会員数は9社だが、「向こう5年で30社以上に増える可能性がある」(同協会)。比較的早い時期から取り扱ってきた酒類販売店は、「クラフトサケは個性的な商品がどんどん増えており、さらに飛躍する期待がある」とみる。
(鈴木雄太)