埼玉県のJA南彩では、「ペカンナッツ」の名称でピーカンナッツの栽培に取り組み、軌道に乗ってきた。JAが栽培講習や苗木の供給を担い、国内の先進産地に育てる考えだ。2024年の収穫量は約60キロを予定。生産者を増やし、28年に100キロを目指す。
財務省貿易統計によると、23年の輸入量は518トン。スナックとして食べたり、菓子や料理のトッピングに使われたりする。JAでは19年から栽培を始めた。苗を植えてから実がなるまで5~7年かかるが、長期的に見れば、高収益が見込める。現在、さいたま市、春日部市、蓮田市、宮代町、白岡市、久喜市の生産者43人が269本を栽培する。
洋菓子店での販売が始まっており、JAは一層の販路拡大へ、県洋菓子協会と話し合いを重ねている。低コストで殻を外して納品する方法など流通面での課題があり、輸入品との価格差を縮める必要もある。

久喜市の生産者・尾野敬一さん(73)は「色々な品種を植え、殻の硬さや実の取り出しやすさを含めたデータをまとめている。販路拡大に役立てたい」と話す。
JAは講習会の開催などで栽培を指導する。JA営農部の斎藤和雄部長は「日本で初めての産地となるよう取り組んでいる。販路を広め、特産品として認知してもらえるようPRも強化していく」と抱負を語る。
(埼玉・南彩)
チョコレートやスイーツの製造・販売を手がけるサロンドロワイヤル(大阪市)は、17年から産官学の連携で国内流通の拡大を目指す「ピーカンナッツプロジェクト」に参加。商品の販売やレシピコンテストの開催などで、国内で市場を広げる。岩手県陸前高田市にタカタ本店を構え、産地をつくり東日本大震災からの復興も後押しする。

同社は、年間約150~160トンのピーカンナッツを使用し、素焼きのミックスナッツやチョコレートなどの商品を販売している。現在は米国産を使うが、同社の前内眞智子社長は「ゆくゆくは全量を国産で賄いたい」と先を見据える。同市には850本ほどのピーカンナッツが定植されており、30年ごろには収穫した実での製品化を目指す。23年には国内初の自動殻むきプラントを稼働させ、受け入れ態勢を整えている。
前内社長は「ピーカンナッツを通じて、陸前高田の復興や、農業だけでなく観光の部分でも後押ししていきたい。円安の中、国産でさまざまな品目を賄えることは豊かな食卓を守ることにもつながる」と話す。
(菅原裕美)

<ことば>ピーカンナッツ 北米原産のクルミ科落葉樹の実。チョコレートやスイーツに使用されるが、日本での商業的な栽培はほとんどなく、国内流通は米国を中心に輸入品に頼っている。