最大産地・高知県によると、2023年度の県産ユズの輸出額は約8億600万円で、ここ5年で2・4倍になった。それでも、「求められる量には全く届いていない」(JA高知県)状況だ。主産地の徳島県でも、23年度の欧州連合(EU)向けの青果の輸出量は、前年比1・9倍の約2・5トン。和歌山県でも、輸出実績の統計は取っていないものの「需要は非常に高まっている」(県の担当者)。
日本産ユズは、スペインの著名なシェフ、フェラン・アドリア氏が各国の著名な料理店に広めたことで、知名度が高まったとされる。
年間100トンのユズを主にフランス向けに輸出するDKSHジャパン(東京都港区)によると、現地の量販店では「YUZU」と表記された菓子や飲料が並んでいる。同社は、「日本産ユズの人気は一過性ではなく定着した。年間150トンほど輸出したいが、供給量が追いついていない」と明かす。
他のかんきつにはないユズの独特な香りは、フランスでは香水の香料としても人気がある。同社が日本産ユズの魅力に挙げるのが、この香りの強さ。韓国など他国産に比べても香りの強さは際立っているという。同社が輸出する果汁は、現地で冷凍ピューレに加工され、ケーキなどの材料にするために、パティシエやショコラティエが購入することが多い。ユズはビタミンやクエン酸が豊富とされ、健康志向の消費者からも評価を集める。
一方、同社にユズを提供するJA高知県は、EUは残留農薬の基準が厳しく「ほぼ農薬を使えないため、除草や害虫の駆除などに手間がかかる点が、増産の壁になっている」と指摘する。EU向けのユズの生産者は、無農薬、もしくは有機JASに準じた方法で栽培している。
同JAによると、生産が盛んな安芸地区では毎年10ヘクタールほどで新植・改植を実施。同地区のユズは現在約300ヘクタールで、15年前から30ヘクタールほど増えた。有機JASに準じた栽培は慣行栽培より隔年結果が激しくなりやすいが、園地の若返りで「できる限り隔年結果を抑えている」(安芸営農経済センター)。化成肥料を使わずに隔年結果を抑える方法も県と探る予定だ。
(森市優)