
20年で面積3・3倍
レモンは主産地の広島県や愛媛県で生産が伸び続けている上に、和歌山や宮崎など他県でも拡大。産地名を冠したブランドレモンも相次いで誕生している。広島県内で販売を手がける広印広島青果は「多くの果樹で減産が進む中、市場にとってはレモンが希望の光」(富久研司さん)と話す。
レモンの加工食品製造などを手がけるポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市)では、主力商品の果汁「ポッカレモン100」の23年の販売本数が、03年と比べて10%以上増えた。同社は「健康志向の高まりでビタミンCを豊富に含むレモンの需要が増えている」と推察。レモンサワーやレモネードのブームも、好調な需要を後押ししているとする。
同社は、レモン全体の需要が高まる中、食の安全意識の高まりで国産の引き合いも強まっていると指摘。これに、追い風になっているのが輸入品の高騰だ。農水省によると生鮮・乾燥レモンの輸入量は、05年は7669万キロあったが23年は4333万キロで44%減。1キロ当たりの単価は128円から259円になった。輸送コストの上昇なども見据え、「国産品の需要は今後も増加、または一定の高い水準を維持するだろう」(同社)とする。同社はすでに、中国四国地域限定で国産レモンを使った「瀬戸内レモンレモネード」を発売しており、国産レモンがさらに増えれば、今後も商品化を検討したいという。

端境期にも出荷
国産レモンの生産をけん引するのが、最大産地の広島県だ。県内の21年の栽培面積は302ヘクタールで10年前の1・5倍。JA広島果実連広島支所の河村博文所長は「かつては誰からも相手にされず、全然売れなかった」と振り返る。食べ方の提案などPRに力を入れつつ、需要期に応える栽培を推進。ハウス栽培や鮮度保持フィルムによる保存で、国産の端境期である6~9月の出荷を強めた。県内のスーパーには常に県産レモンが並ぶようになり、「単価も高く、しっかり稼げる品目になった」(河村所長)。
約2ヘクタールでレモンや温州ミカンなどを栽培する呉市の黒田佑さんは「みかんより枝の残し方が簡単で管理しやすい。収穫期も長く作業に無理がない」と、レモンの作りやすさを評価。鳥獣が寄り付かないのも利点という。
(南徳絵)
