
昨年末から発生が相次ぐ鳥インフルエンザによる供給減で、鶏卵の店頭価格が上昇している。農水省の食品価格動向調査によると、直近2月(10~12日)の小売価格(サイズ混合・10個入り)は、平年比19%高の1パック276円。今年度の最高値を更新した。都内のスーパーでは、特売の数量を減らすなど供給減への対応に迫られる。
そのような中、飼養環境にこだわり生産された高単価の平飼い卵の需要が広がりつつある。平飼い卵とは、採卵鶏をケージの中で飼養するのではなく、地に放し行動が制約されないように飼養し、生産された鶏卵のこと。ケージ卵と比較すると店頭価格が2倍ほど高値で売られるが、消費者の健康志向の高まりから売り上げを伸ばす。

小売り大手のイトーヨーカドーは平飼い卵の売り込みを強化する。24年10月から、6個入り(321円)に加え、10個入り(518円)の販売を開始した。販売開始以降、10個入りへの切り替えが進み、24年度の売上高は前年度比で1割増えた。同社は「高単価であっても売り上げは伸長しており、平飼い卵への注目度は高い」とみる。

茨城県で約13万羽の鶏を平飼いする養鶏農場・くらもちでは、消費者ニーズの高まりに応えようと飼養規模を約2倍に拡大した。「くらもちの平飼いたまご」の6個入りは、希望小売価格400円(税別)で販売しており、売り上げは好調。25年の平飼い卵全体の月間販売数量は前年比2割増え、20年比では9倍に上る。
消費者ニーズの高まりの背景には、インバウンド(訪日外国人)の増加もある。動物福祉の考え方が先進している国や地域からのインバウンド増加で、朝食で使う鶏卵を平飼い卵に変更する外資系ホテルもある。同社の販売担当者は「消費者にAWの考えが広まり需要が拡大。小売りに加えてホテルなど業務筋からの引き合いも出てきた」とする。
認定NPO法人アニマルライツセンターの岡田千尋代表は「消費者ニーズの高まりに後押しされ、飼養方法をケージ飼いから平飼いに変更する農場もある」と生産量の増加も見込む。
鳥インフルエンザの影響でケージ飼い卵の相場が上昇している。「ケージ卵と平飼い卵の価格差が縮まることで、さらに高単価の平飼い卵を買う消費者が増えている」(同)との見方もあり、今後の需要にも注目が集まる。
(廣田泉)